読書日記「百年の孤独」
刑事事件で、執行猶予か有罪かぎりぎりの事件があった。
午前に事件を引き受け、午後一番で母親と会い、費用を用立ててもらって、その前に検察官と電話で話をして了承を取り付けて、保釈申請をして、夕方には保釈で出られたということで、本人は軽く見ていたのだが、交通事故の事件で被害感情は重く、飲酒運転ということもあり、結果がどうなるかは分からない状況であった。早朝から被害者の親族に謝罪をするため、遠方まで行き話をさせて貰ったが、ものすごく怒っておられた。
保釈されている被告人が実刑判決を受けると保釈の効力が失われて収監される為、あらかじめ検察官には実刑であることを知らしており、収監のために検察事務官が法廷に来ているので、そうしたぎりぎりの事案では、法廷に検察事務官とおぼしき人を探すことから弁護人の仕事は始まる。
この事件では、法廷に入ると、背広姿の男性が二人座っていたので、事務官であるのかないのかとヒヤヒヤしていた。
事前に実刑もあり得るという話をしていた為、本人が法廷に来た時には顔が真っ赤でものすごく酒臭い。私は法廷が始まる前に被告人に怒ったが、「これで実刑になったら先生を頼んだ意味がないやんか。酒も飲みたくなりますわ」と逆にキレてくる始末。これに対してまた私が叱りつけた上で法廷が始まった。私が刑事事件を起こしたのではなく、自分が起こしたのである。
少し前に読売新聞を読んでいると、受刑者は反省することなく、「自分は運が悪かった」という気持ちでいる人間がほとんどで、被害者のことや事件に対して真摯に反省するということはないという刑務官の話が載っていた。
私も相当数の刑事事件を手がけてきたが、これは真実を衝いている報道であろう。
結果的には執行猶予がついたし、このような被告人の為にも最大限の弁護活動を行ったのであるが、それが仕事とはいえ弁護士は因果な商売ではある。