訴えの提起と不法行為

中隆志

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裁判を出された被告側の事件を受任する際、「こんなことで訴訟を出されるなんて納得がいかないから、反対に相手を訴えることは出来ませんか」と依頼者から言われることがある。趣旨としては、訴訟の当事者にされたことじたいを精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求をしたいということなのである。場合によれば、私に支払う弁護士費用も請求したいといわれる。

 しかし、相手方が裁判をすることは憲法上の権利なので、これを制限することは原則的に極めて難しいし、こちらからすれば裁判をされたことはばかげたことでも、相手からすれば、それなりの証拠でもって訴訟が維持出来ると考えているかしれない。また、結果としてこちらが敗訴するかもしれないので、なかなかそのような訴訟は難しいですよという説明をしている。
 また、弁護士については、弁護士を依頼することが強制されているわけでもなく、本人でも訴訟は出来るタテマエとなっているので、それが損害とはなかなか認められないという説明もしている。ただ、交通事故などの被害者側の場合一定金額が弁護士費用として損害の一部で認められる場合があるのみである。

 最高裁でも、訴えの提起が違法とされる場合は、「当該訴訟において提訴者が主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くときに限り」訴えの提起が相手方に対して違法な行為となるとしている。

 訴訟の当事者となることはやむを得ないことの方が多いということである。

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