読書日記「百年の孤独」
私が弁護士登録をしたころ、クレジットサラ金相談で債務整理の人を受任してきた。兄弁に聞くと、「あまり経験がない」ということであったので、本を見ながら手続を進めていく。
そうしたところ、貸金業者から怒号で電話。「何で取引経過出さないとあかんのじゃ」とか取引経過は説得して出てきたものの、それを利息制限法で計算すると、「うちは利息制限法は認めへん。京都でそんなこというのアンタだけやで。」との回答。「利息制限法を主張しない弁護士なんていない。他の弁護士がおかしいのであって、私は間違っていない」と電話でケンカをした。今では考えられない話である。
その後、大阪高裁に行く京阪電車の中で、偶々ベテランの先生方2人と同席したので、「債務整理って難しいですね。中々合意出来ないですわ」というと、あるベテラン弁護士は、「中君。そんな難しいかなあ。まだまだやな。相手の主張する金額を認めて、1万円ずつ支払ういうたったらすぐ合意出来るがな」とのこと。
「えっ。先生は利息制限法を主張されないんですか」
「あれはほら、貸金業者やったら40.004(注、当時の出資法の上限金利)%まではとれるやんか。だから仕方ない」
「先生、あれは貸金業規制法みなし弁済の規定という条件が整わないと取れないんですよ。そんな条件整えている業者ほとんどいませんし、仮に50万円残っていて10年間取引があったら過払いが出て、弁護過誤になりますやん」
「ウソー。でも大体みんなそれでやってるで」
と隣のベテラン弁護士を見ると、そのベテラン弁護士も「手で計算するの面倒くさいしな」とのことであった。業者の言っていることはあながちウソではなかったのか。物凄いショックを受けた。
これではまじめにやっている私の仕事がやりづらいと考えて、私は表計算ソフトで利息計算のソフトを作り(当時はそんなもの市販されていなかったのだ。しかも私の当時のソフトはロータス1-2-3。その後エクセルでも作った。)、弁護士会で配布をするとともに、当時の消サラセンター運営委員会委員長に進言して、「研修をするべきだ」として消サラセンターの委員になり、大阪から講師を招いて債務整理に関する研修を開催したのであった。そのときの研修会を元に、「債務整理の実践的ノウハウ」という小冊子を作り会員の配布した。
その後も私も業者との衝突はあったが、多くの弁護士がソフトを使い交渉を始めるようになると、業者の方もどうしようもなく、現在のような情勢となっていったのである。
その後はソフトが市販されるようになり、より簡便に計算出来るようになっているが、現在京都でも過払訴訟が普通にされているという状況は、私が登録したわずか12年前には見られない光景だったのであるし、利息制限法を主張する弁護士も数が少なかったのである。