読書日記「百年の孤独」
弁護士として必要な能力の一つとして、シミュレーション能力がある。これは、何もゲームのシミュレーションゲームがうまいとかいう意味ではなく、事件について、いろいろな場面を想定して、対応できるように考えておく能力ということである。
ある程度経験を積めば、「ああいわれたらこういう」で、とっさに対応できるが、経験の浅いうちはとっさに対応できず困ることもある。そうした場合に備えて、事件で法廷に臨むとき、依頼者との打ち合わせのときなど個別の事件で場面を想定してどのように対応するかシミュレーションするのである。
裁判に向かう道すがら、「今日の裁判ではこうした点が聞かれるかな」「相手はこのように指摘してきたらこのように反論しよう」というようにシミュレーションをしておくと、法廷で慌てずに済むことが多い。
慌てないためにも、法廷には早い目に着くことをお勧めする。少し早い目についておくとやはり心構えも違うからである。
シミュレーションをしたからといって、別に、むやみやたらに議論をすることもない。シミュレーションをしていても何も言われなかったり聞かれなかったりすることがあるが、それはそれでよいのである。
その事件で当該期日の際に絶対に言うべきことがあるのであれば言うべきではあろうが、あまりべらべらと裁判所から聞かれてもいないのに話をする必要もない(印象づけのために敢えて話をした方がよいときはあるが)。
また、ことさらに自信がないのもどうかとは思うが、相手の弁護士に対して偉そうにいう必要もなけけば、ケンカ越しになることもない。だいたい偉そうにしていたりケンカ越しの輩は底が知れている。虚勢である。
そうでもしないと、自信がないからやっていけないのであろう。
そうした弁護士を見るたびに、「大馬鹿だなあ」「自信がよほどないのだな」と思うのである。偉そうに言ったり、けんか腰でいえば、自分が優秀なように見えるとでも思っているのであろうか。そうした態度は、逆に自分に能力がないと感じていることを相手の弁護士に教えるようなものである。
そんな現場でのシミュレーションはいらないのであり、法廷での現場のやりとりは淡々としていれば足りる。