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コラム

破産と足し算、引き算

2010年12月10日

コラムカテゴリ:法律関連


多重債務を抱えて来られる人の中には、「借りたものだから返したい」という人もやはり多い。そうした債務者には、まず毎月の収入から、生活していく上で絶対に必要なものを引いていってもらう。賃料(又は住宅ローン)、水道光熱費、食費、雑費…。そうすると、その残りが出てくるのであるが、これが「返済することが出来るお金」である。

 先に返済して、残りで生活しようとすると、どうしても生活費が足りなくなるから、そのためにまた借入が増えるのである。こうした足し算引き算が出来ていない人が多いのである。

 加えて、こうして返済することが出来るお金が1万円程度であったとしよう。そして借入はどうみても500万円は残りそうだというときに、「どうやって返すの?」と聞くと、一部の債務者は、「頑張って返します」というのであるが、「私が聞いているのは精神論じゃなくて、足し算引き算の問題なんやけど。500万円の借金を毎月1万円返したとしても、500回かかるでしょ。41年以上かかるんですよ。そんな提案債権者が了解しないですよ。」というと、「やっぱり返せないですかねえ」となるのである。

 もちろん、私だって返済出来るかをまず見る。そして全額は無理でも一部返すことなら可能であれば個人再生を選択する。しかし、多重債務状態になっている当事者は実は生活でいっぱいであり、返済など出来ないことも多いのである。

 ぎりぎりの返済計画を立てても、病気で仕事を休むかもしれない。子どもの学費にお金が必要かもしれない。そうすると、やはりある程度貯蓄を出来るようにしていくのがベストなのである。そうしたリスクファクターも検討して、破産を選択することも多い。

 しかし、中には数年経って、「先生、また借りちゃったんです…」と電話してくる人もいる。もちろんその事件は私は受任できない。前の破産の際に、「今後は借入しないで」と説明しているからである。知り合いを紹介するか、弁護士会の相談に行ってもらうしかないのである。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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