読書日記「百年の孤独」
民事訴訟には移送の申立という制度があり、遠隔地で裁判が出された場合に、証拠調べなどの必要がある事件(中身に争いがある事件)では、他に裁判の管轄がある裁判所に事件を送るように申立が出来るのである。これは合意管轄がなされていても出来る。
たとえば大手金融会社などはたいてい東京が本社なので、東京簡易裁判所を裁判の管轄に定めていることが多い。そして、東京簡易裁判所に訴訟を出してくるのである。
訴訟を出される前から我々弁護士がついている場合には、こちらから債務不存在確認請求訴訟などを出すことになるので、本人の住所地に訴訟を提起することになるのであるが、本人が交渉していて決裂したようなケースでは、いきなり京都の人なのに東京で裁判が出されたというケースもある。
中身に争いがあれば、その中身を書いた移送の申立書と、本案前の答弁書というものを出して、事件を当事者の住所地の裁判所に送るよう求めることが出来る。ただし、争いがあることが分かる中身を具体的に書かないといけないので、答弁書作成はけっこう大変である。
私が作ったひな形があるが、これは企業秘密なのでそのうち事務所の会員専用ページでも作ってダウンロードできるようなひな形の実務的書式集を作ってみようかと思っている。会員をどういう人にするかはまだ考え中であり、弟子に限ろうかとも思っている。
私は移送申立を数々したが、負けたことがないし、一番すごいのは大阪簡易裁判所から京都簡易裁判所に移送させたことである。普通は近いので認められない。
なお、小さい訴額の事件だと、移送申立が認められた時点で訴訟が取り下げられて、事件全体が解決することもある。コストをかけてまで京都まで来られないという訳である。うまく移送申立を活用すれば、紛争まで事実上解決することがある。訴訟外で和解を求めてくることもあるので、意外に活用できる。
成り立ての弁護士だと、「東京まで行こうと思っていました」なんてこともあるので、この制度は重要である。