読書日記「百年の孤独」
不動産の仮差押をして、供託金を決定された時に、異様にその金額が高かったことがあった。仮差押というのは、「仮に」相手方の財産を差し押さえる手続である。
裁判を出してもその間に裁判の相手方が財産を差し押さえられては困るということで名義を移転したり、売却したりすることがある。それを防ぐために、正式に裁判を出す前に、相手の財産を「仮に」差し押さえて名義移転などが出来ないようにするための手続である。ただし、あくまで仮のため、それなりの資料が揃っていれば、相手の言い分を聞かないで裁判所は決定を出してしまう。しかし、相手からすれば言い分をいう機会もないために後の裁判で相手方が勝つこともあるため、その場合には、相手方に損害が出ることがあり得る。そのために担保を積む必要があり、これを供託金というのである。
事件にもよるが、請求金額か差し押さえる目的物の価格の1割~4割程度で決められている。
ところが、ある事件で供託金がもの凄く高いことがあった。裁判所に抗議したが、裁判官は、「既に決定したことです。教科書にもそう書いてあるでしょ。」という回答でにべもない。ただ、私の実務家の経験上、明らかに高額にすぎた。
そこで、私は供託金の決定金額が高すぎる場合に高等裁判所に不服申立が出来ないかと考えて調べだした。事務所にあった本では「出来ない」と書いてあった。
しかし、供託金の決定も一つの裁判なのであるから、裁判に対して不服申立出来ないのはおかしいと考えた私は、弁護士会で他の本を探し、本屋でも他の本を買い込んできた。そうすると、2冊の本では「出来る」と書いてあった。
本によって見解が異なるのである。私は私の考えと一致する書籍の方を信じて不服申立をした。
そうしたところ、高等裁判所で供託金が大幅に減額されるという決定が出たのである。
それ以来、その裁判官は何となく私をはばかるようになったが、ここで重要なことは、調べ物をする時は同じ論点について少なくとも2冊、出来れば何冊もの本で調べるべきであるということである。私が最初の本で諦めて終わっていたら、この逆転判断は取れなかったのである。本も間違っていることがある。この人に本が書けるのかいなという人が執筆者になっている本も数少なからずある。複数の本にあたるべきである。
そして本に書いていないことで迷った場合には、原理原則に立ち戻り考えて進んでみることである。