慢心した頃に失敗する

中隆志

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弁護士になって1年くらい経つと、自分で解決出来た事件も出てきて、ある程度自信がついてくるものである。この頃に、「自分もたいしたもんじゃないか」と思って慢心することが多い。失敗はこの慢心した頃にやってくる。成果が自信につながることは当然であるが、過信や慢心はいけないのである。ことに、弁護士をして1年程度であれば、どうしても経験上足りないところがある。これを補うのが熱意であったり調べたりすることであるのに、慢心してしまうと補うべきところが空いたままになる。

自分が出来ると思って依頼者に偉そうになったり、法律家の世界では当然であるからとして丁寧な説明をしなくなったり、事件の話を全部聞かずに、「こういうことでしょ」と決めつけて話を聞かないとか、依頼事件についていい加減に聞いて考えているために、事件を進めていくうちににっちもさっちもいかなくなったりするのである。実際、若手弁護士から「こんなことを言われた」とかで、カウンセリング的な相談をすることもある。そうした相談のあと、その人の言動を見ていると、「慢心しているな。」と思えることが多いし、「失敗しなければいいけどな」と思う。

私自身、慢心して失敗すると、その失敗によって慎重に行こうとする→事件がうまくいく→また慢心する→失敗して反省→またうまくいく→慢心する…の繰り返しであるので、これは自省の意味を込めている言葉である。

 失敗といっても、リカバー出来るようなものであればよいが(私は今までリカバー出来る程度の失敗しかしていない。そういう意味では失敗ではないのかも知れないが)、そうでない失敗をしたら取り返しがつかない。
 おごった心から、懲戒や刑事罰を受けて、弁護士資格を失った人もいる。

 また、自分では出来ていると思っていても、周囲の弁護士からしたら、「アイタタタ」「あいつ痛いわ~」という人もいる。

 弁護士も自信が過信や慢心になっていないか日々自省することが大事である。

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