体の芯に残る弁護士の疲れ

中隆志

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弁護士を長年していると、体の芯に何とも言えない「澱み」というか、「疲れ」というようなものが取り付いてくる。
 私は弁護士になって11年目で、中堅の部類に入ろうとしているのであるが、弁護士になった年齢が若かったこともあり、なった時からずっと、依頼者から「若い」「若い」と言われ続けていて、疲れ知らずのように思われているが、私も自分的にはだいぶ歳を取ったと思っているし、人間だから疲れもする。
 そんな疲れは知らないという弁護士もいるが、そうした人は事件に対する気配りなどがあまりないので、疲れないのであろう(実際見ていると、それで処理の仕方いいのかいと思ってしまう)。
 一件一件の事件に対して真剣に取り組めば、その事件の持つ、「負のエネルギー」のようなモノが少しずつ体にたまっていくようで、それが澱みというか、疲れになるようである。よく親友のY田S司弁護士とそうした話をしている。
 弁護士の仕事は、基本的には紛争になっている事件を解決することがメインである。訴訟外での交渉、調停、訴訟と形式はいろいろあるが、やはり紛争にはそれぞれの当事者やその周辺の人々が持つドロドロした思いが作用反作用を起こして、負のエネルギーが発生していると思っている。これは依頼者がどうだとかいう問題ではないと思う。
 また、事件処理をする中で、弁護士は悪意にさらされることも多い。依頼者からの無理な要求や、いくら説明しても理解して貰えないとか、依頼者のことを思い頑張っても「報酬をまけてくれ」と平然と言い張る依頼者等。また、相手方は基本的に対立当事者の依頼している弁護士に悪意を有していることがあるので、相手方からの悪意にさらされることもあるだろう。
 企業中心の事件をしていれば、こうしたドロドロした人間関係に入っていくこともないのだが、一般の弁護士はこうした負のエネルギーの中で仕事をしている。
 ロースクール生が多数弁護士を目指していると思うが、まさか全員が企業法務を行う弁護士になるわけではないであろう。安易な気持ちで通常の弁護士を目指しているなら、こうした負のエネルギーには耐えられないであろうから、他の仕事を探した方がよい。
 こうした、芯に残る疲れを取るために、多くの弁護士は芯に残る疲れを取る方法をそれぞれ持っているものだ。修習生や若手弁護士も何かそうした方法を持たないと、精神が壊れる場合があるから注意が必要である(何人もそうした人を見てきている)。

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