読書日記「百年の孤独」
民事訴訟というものは、基本的にそれぞれの立場での主張をやりとりして、それを裏付ける証拠を提出する中で、真実が発見されるという構造を取っている。
そのため、訴訟上で提出される書面では、相手方の主張が事実と異なっていることとか、法的に理由がないことを批判し、反論していくことが当たり前のこととなっている。
ところが、こうした書面の中で、不必要・不適切な表現で相手の主張や行為をあげつらうと、名誉毀損の問題が生じて、かつ、弁護士法上の懲戒の対象となる。相手方弁護士に対しても、礼節をもって対応しなければならない義務があるからである。
私は常々訴訟は「オトナのケンカ」であると依頼者に説明していることから、依頼者がもっと相手のことを悪し様に書いて欲しいという要望があったとしても、これに応じることはしていない。弁護士は、品位を保持しなければならないとされていることからも、これは当然でもある。
しかし、訴訟においては、しばしば、「これはひどい」という表現に出会うことも多いし、最近そのような傾向が強くなってきたように思う。弁護士は勤務弁護士を経て独立するという経緯をたどっていた時代には、ボス弁の薫陶により、そのような書面を書くことはボスから叱咤されて取りやめさせられる中で、訴訟における主張のルールを知ったのだと思うし、私自身もそうして鍛えられたつもりである。
若い弁護士で、不穏当な表現を多用する弁護士が多くなってきているように思えるし、そのような書面は裁判官が読んだ時にもいい印象は受けないであろう。
私は、若い弁護士がそのような不穏当な表現を使用した時は、そのような書面は提出すべきではないとして、諭すことも多い。また、場合によれば、裁判官が削除を要求されることも多い。それでもなお主張したいという場合には、裁判の場におけるルールを逸脱したものとして、懲戒処分の対象となってもらうしかないと思っている。それだけ裁判の場というのは厳しいのである。強気な書面と、品位のない書面は似て非なるものである。
このブログは、修習生も読んでいると聞いているので、ぜひ実務家になった時には気をつけていただきたいものである。
また、不必要な指摘をしたがばかりに、言われた方の当事者が意地になって、和解できる事件が和解出来ないということにもなりかねない。いろいろな配慮が必要である。
もう一つ、やたら相手の弁護士に対して偉そうな人がいるが、このような弁護士は、他の人に評判を聞いても、やはり「あの人は変わってるで。」という評判しか聞かない。
同じ弁護士同士であるから、訴訟上は厳しい主張を戦わせることは当然であるが、それと相手の弁護士に対してやたら偉そうにすることは別である。目下の弁護士に対して偉そうにしている弁護士は、逆に自分に自身がないのかな…と思ったりしてしまうし、こちらが目上であるにもかかわらずやたら偉そうな若い弁護士は、こちらから見ていると自身がないから肩肘を張っているのかな…と思えたりして、何か滑稽な感じがしてしまう。
私の知っている尊敬出来る弁護士は先輩にも後輩にも何人もいるが、そのような人は、私以外からも尊敬されているし、皆一様に誰に対しても偉そうにせず丁寧である。逆にベテランの弁護士が若手に丁寧に接している姿を見ると、「自分に自身があるからこそ出来るのだ」と感銘を受けるのである。
私自身もベテランの域に達した時、そのような対応が出来る弁護士となりたいと思っており、やたら偉そうにする弁護士にはなりたくないと思っている。