労働生産性向上のプロ
松村篤
Mybestpro Interview
労働生産性向上のプロ
松村篤
#chapter1
企業におけるコンプライアンス(法令遵守)が問われるようになって久しくありません。さらに、最近ではCSR(企業の社会的責任)にも注目が集まっています。これらのコンプライアンスやCSRといった課題は、企業の規模にかかわらず無視できない時代となってきました。
JR京都駅近くに「みやこ社会保険労務士事務所」を構える社会保険労務士の松村篤さんは、法令を遵守した管理体制の構築をサポートしています。「例えば、残業代。残業代の未払い問題は報道でも目にするようになりましたが、きちんと支払っていないと後で大変なことになります」と、松村さんは警告しました。「“未払いの残業代は隠れた負債”です。“他社でもサービス残業はあるから”“社員には残業代を払わない旨を伝えてあるから”は通用しません。労働基準監督署の立ち入り調査があり、是正指導を受けることになります。それだけでは済まずに、(元)従業員から労働基準監督署に“告発”されると、“送検”されることになり、裁判で敗れるようなことになれば莫大な割増賃金の支払を命じられることにつながります。最悪の場合は“労務倒産”ということになります。こんなことにならないよう、労働時間や残業代に関しては正しい管理が必要です」
そこで松村さんは企業の給与体系を見直し、給与体系に潜むリスクを明確化するそう。「月の労働時間から残業代を算出し、正しく残業代を支払うことができる給与体系に変更します。もちろん、給与体系変更の趣旨をきちんと企業側から従業員に事前に説明することは必要ですが」。退職した従業員に労働基準監督署に駆け込まれたりと、残業代の未払い問題が浮き彫りになったりしてから相談する企業の経営者も少なくないそうですが、何より早期の対策を松村さんは訴えています。
#chapter2
残業代の未払い問題などの労働トラブルを防ぐのに効果的な管理体制の構築。こう聞くと「守り」の印象を受けますが、松村さんは「攻め」の成長戦略としてもとらえています。「一日の労働時間から残業代を含めて給与を細かく分析していくと、従業員一人一人の“いくら稼いでいるのか(労働生産性)”が自ずと明らかになります。労働生産性を上げていかなければ、当然のことながら利益が増えることはありません。管理体制の構築を目指し、適正な人員配置となっているかなど、現状を改善していくためにはあらゆる実態分析を行う必要があると考えています」
松村さんは従業員のモチベーション向上のための「従業員調査」をはじめ、各種分析サービスを通して企業の現状と人事施策・賃金制度などを把握。その上でさまざまな制度作りにもアドバイスし、労働生産性の向上に取り組んできました。社会保険労務士として独立して約5年。「まだまだ若手です」と話す松村さんですが、従業員が5人ほどの中小・零細企業から東証一部の上場企業まで、顧問を務める企業の数は20社を超えるのだとか。着実に顧問先の企業を増やしてきたことが、分析サービスによる実績を物語っていると言えるのではないでしょうか。「労働生産性が高い強い組織を作るために、まずは管理体制を整えましょう」。これが松村さんの成長への提案です。
#chapter3
「社会保険労務士は企業の“人”にかかわる問題に向き合いますが、“人の問題”は必ず“お金”に直結します。会計上の帳簿には表れにくい数字、例えば、従業員の一時間当たりの売上高や利益高はいくらになっているのかなど、労働生産性などに目を向けて企業の成長を一緒に考えることが強みでしょうか。社会保険労務士にあまり馴染みのない経営者の方も気軽にご相談いただきたいですね」
「お客さまには“まっちゃん”と呼んでもらっています」と、気さくな人柄が伝わるエピソードを教えてくれた松村さん。信条は「顧客の要望に対して“できない”とは言わないこと」だそうです。「“法令を守りなさい”“法令によって禁止されています”などと理屈だけの指示型のアドバイスでは、現場の理解は得られません。企業が抱える課題や問題点をしっかりと把握して改善策を提示し、その結果として法令を遵守してもらうようになる道筋を示すことが私の役目だと思います」。企業にとって法令を遵守することは、トラブルを防ぐことだけではなく、労働生産性の向上による成長のために欠かせないとの松村さんの話には説得力がありました。「その場しのぎの助成金受給に満足するのではなく、腰を据えて管理体制の構築を」と強く呼びかける松村さんのような社会保険労務士は、企業のビジネスパートナーとして、ますます存在価値が高まっていくのかもしれません。
残業代、きちんと支払っていますか? 従業員は経営者と同じ方向を向いていますか? 松村さんが管理体制を構築し、労働生産性の向上を実現します。
(取材年月:2010年6月)
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