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初期診療=プライマリ・ケアの充実で、病気治療に安心と満足を

プライマリ・ケア(初期診療)のプロ

古家敬三

古家敬三 ふるけけいぞう
古家敬三 ふるけけいぞう

#chapter1

むやみに病名を自己判断せず、まずはプライマリ・ケアから

 「もし胸が痛くなり、病気ではないかと疑ったとき、あなたならどうしますか」。そう問いかける古家敬三さんは、外科、内科、消化器系の診療に携わっている医学博士です。「最近多いのは、周囲に相談したり、インターネットで検索し、思い当たる病名の専門医にかかろうとする患者さん。でもその病名が当たっていなかったら、病院に行ったかいがありません。実は患者さんの自覚症状と、実際の病気は異なる場合が多々あるのです」

 胸痛を例にとっても、心筋梗塞、肺がん、逆流性食道炎、肋間(ろっかん)神経痛、乳腺症、不安神経症などさまざまな病気が考えられます。複数の専門医を次々と渡り歩いたり、むやみに必要のない検査を受けたり、逆に何科にかかるべきか迷っているうちに悪化するなどのケースが少なくありません。「何の病気か患者さんが自己判断するのではなく、患者さんの様子を全体的に捉え、的確に診断する医師の存在が不可欠なのです」

 そうした初期診療に取り組む医師は「プライマリ・ケア医」と呼ばれ、アメリカではすでに定着。ひと昔前の日本における「かかりつけ医」「町医者」「家庭医」がそれに当たります。顔なじみとなり、家族構成、性格、病歴もわかってくれている「近所のお医者さん」。その存在が日本では今、あらためて注目を浴びつつあるのです。

 「専門医は、専門分野のプロ。一方でプライマリ・ケア医は分野の垣根を越え、患者さん=人を診るプロ。確かな目を持ったプライマリ・ケア医が初期医療に当たれば、治療もスムーズにスタートさせることができるのです」

#chapter2

医師と患者の信頼関係からよい医療が初めて実現できる

 消化器系の勤務医と、プライマリ・ケアに取り組む開業医の両方を経験してきた古家さんは、両者の役割分担が重要と考えています。「専門医はどうしても専門分野をメインに患者さんを診察してしまいがち。でも別の病気が合併している可能性が少なからずあるのです。それを最初の時点で見落とさないのがプライマリ・ケア医の重要な役割。初期診療でしっかり診断し、その後はしかるべき専門医に治療を引き継ぐのがベストなのです」。

 プライマリ・ケアが真価を発揮するのは、医師と患者の信頼関係があってこそ。たとえば専門医から勧められた手術を嫌がる人の気持ちをくんで、手術以外の選択肢を古家さんが提示したところ、希望を持って治療に取り組むようになりました。逆に3か月近くもインターネットで手術以外の治療を模索し続けてきた人に、手術が最善の選択肢だと勧めたこともあります。「治るチャンスをみすみす逃さないで」とメリットを丁寧に説明。その人は古家さんの言葉を信じて手術を決心しました。「患者さんのしたいようにすれば満足につながるとは限りません。また症状だけでなく、気持ちをくみながら適切な治療法を提案しています」。「この先生に相談してよかった」と言われる由縁でしょう。

 プライマリ・ケア医はどの治療が最もおすすめか、的確に提示する必要があります。たとえば同じ病名でも、年齢や持病や行動パターンでベストな治療が違うため、人を見ることこそが重要。また全ての領域について広く浅く最新の知識を持ち続けなければなりません。医療は日進月歩なので、学会や研究会で常に情報収集しています。

古家敬三 ふるけけいぞう

#chapter3

些細な患者さんの訴えから最期の局面まで見届けたい

 患者自身が病気を意識していなくても、ささいな訴えから重大疾患になる前に病を見つけられるのも、プライマリ・ケア医ならでは。たとえば食欲不振、眠れない、肩こりといったよくある訴えが大きなサインという場合もあるのです。

 「私が初期診療をして専門医に託し、病院で治療を進めていた患者さんの、最期を看取るという経験もしてきました。専門医のもとで治療し尽くした後は、慣れ親しんだ私の診療を受けながら自宅で最期を送りたかったと聞いたとき、これも理想的なプライマリ・ケアのあり方なのかもしれないと、患者さんから教えられました」

 医師会の活動にも積極的に取り組む古家さん。「患者さんを全人的に見極められる医師を増やしたい。日本にプライマリ・ケアを定着させたい。そして今、患者が殺到しすぎて疲れたり燃え尽きたりが懸念されている専門医に、本来の役割を担ってもらいたい。そうやって医療全体にいい循環が訪れる未来を願っています」

(取材年月:2010年4月)

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