土地や中古住宅を探すときに思うこと 診断士(インスペクターとして)
嫌われることが目的? 住宅診断のプロが語る、消費者と建設会社が良好な関係を築くために必要なこと!
「ホームインスペクター」、つまり住宅診断士という存在をご存知でしょうか。これから家を買ったり、建てたりする際に、専門家の目で建物の健康状態をチェックしてくれる、心強い味方です。
しかし、この仕事をする中で、違和感を覚えることがあります。それは、「工務店や建設会社と対立します」「嫌われるくらい細かいところまで指摘します」といった言葉を掲げるインスペクターが存在することです。一見すると、消費者の味方になってくれる頼もしい存在に感じるかもしれません。しかし、本当にそれが、あなたの家づくりにとって最善の道なのでしょうか?
「対立」を売りにすることの落とし穴
住宅は、建てて終わりではありません。引き渡し後も、メンテナンスやリフォームなどで、建設会社との長い付き合いが続きます。もし最初から「対立」ありきで関係を築いてしまうと、その後のコミュニケーションが難しくなり、かえってトラブルの原因になりかねません。
私たちは多くの現場を見ていますが、真面目に、そして誠実に良い家を建てようと努力している会社がたくさん存在します。頭ごなしに「嫌われる」ことを目的とするような姿勢は、そうした職人や会社の努力を無視することにもなりかねません。
大切なのは「第三者性」と「正確な情報」
私たちインスペクターの真の役割は、消費者を「守る」ことです。しかし、それは決して、建設会社と「戦う」ことではありません。私たちの仕事は、あくまで「第三者」として、建物の現状を客観的に、そして正確に診断し、その事実を丁寧に伝えることです。
例えば、診断で小さな不具合が見つかったとしても、私たちはそれを交渉の材料にするのではなく、「この部分にこういう現状がありますので、今後の対策について建設会社様とご相談ください」と冷静に情報を提供します。最終的に、どう判断し、どう進めるかはお客様自身が決めることです。私たちはその判断の助けとなる、正確な知識と情報を提供することに徹します。
私達は指摘事項は小さな事も隠さずしっかりと報告しています。実際に手直しや、やり直しして貰ったことも多いです。
そのためにトラブルに発展しそうになった事は無いとは言えませんが、お客様が揉めてしまっては、将来が不安なのでうまく交渉する方をおすすめして、そのご相談には根気よくお付き合いしています。
「交渉します」と言うインスペクターに注意
一つ、皆さんに知っておいていただきたいことがあります。もし、「私たちが代わりに建設会社と交渉します」と謳うインスペクターがいたら、それは危険なサインです。法律上、建築会社との交渉は弁護士の専門分野であり、法的な資格を持たないインスペクターが行うことはできません。こうした約束をするインスペクターは、本来の業務範囲を超えており、後々大きなトラブルに発展するリスクが高いのです。
住宅診断の目的は「戦い」ではなく「未来」
住宅診断の目的は、欠陥を見つけて相手と「戦う」ことではありません。安心して長く暮らせる家を「守り」、その家の「未来」をより良いものにすることです。
私が役員を務めホームインスペクションの普及に努める日本ホームインスペクターズ協会は、消費者と建設会社が良好な関係を築けるよう、その橋渡しをすることを理念としています。信頼できるインスペクターは、あなたの家づくりの良きパートナーとなり、正確な診断と知識を提供することで、安心へと導いてくれるはずです。
このコラムが、皆さんの家づくりや住宅診断に対する考えを深めるきっかけになれば幸いです。



