「塾ジイの思い出」3 ―【学習意欲≠ヤル気】の定義―
こんにちは。株式会社 宇加瑠出進学教室 広報部長の小曽利三太郎(こそり みたろう)と申します。先般弊社OBである塾ジイこと出口利光先生の行政書士試験に挑まれている奮闘ぶりを「実録!出口先生のCHALLENジイの道」というタイトルにてWEB社内報で発信したところ大きな反響がありました。この度出口先生シリーズ第二弾として「ヤング塾ジイ!出口先生のあし@」と題し、先生の成功事例や失敗談を私との対談を通じて社内で共有することとなりました。今回はその第一回の模様をお伝えします。
教えない授業で成績爆上がり!?
「みなさんお疲れ様です。広報部の小曽利です。WEB社内報をご覧いただきありがとうございます。今回は「ヤング塾ジイ!出口先生のあし@」と題して出口先生の現役時代のお話をお伺いしていきます」
「出口先生、本日はよろしくお願いします」
「本当にわしの話を聞きたがっている職員はいるのか?」
「たくさんいますよ!」
「他に何か企画は無いのか?」
「無いから先生に頼っているんですよ」
「正直じゃな」
「ところで今回は先生がかつて指導されたクラスの成績についてお伺いします」
「どこのクラスじゃ?」
「小学校6年生の社会科です。なんか凄く成績が上がったと聞いたことがあるんですが、本当ですか?」
「あ、その話か、それは本当じゃ」
「今日はそのお話をじっくりお伺いしたいです」
「わしは宇加瑠出進学教室に就職して4年目くらいの頃までは小学生には国語を指導していたんだが、中学受験クラスの社会を担当するよう当時の上司から言われたんじゃ」
「それまで社会科をご指導されたご経験はあったのですか?」
「全く無かった。その上司は文系教科を複数指導できるようにしておくと相乗的に指導力が上がるという仮説を持っていて、部下育成の一環としてそのミッションをわしに与えたんじゃ」
「なるほど…それは大変だったでしょう?」
「どうやって授業をすれば良いか途方に暮れたな。先輩の授業を見学したが社会の授業は“トーク力”が重要なのでわしには無理かなと感じた」
「ではどうやって授業をされたんですか?」
「社会の内容を教えるのは無理なので教えないことにしたんじゃ」
「はっ!?授業で教えない?どういうことですか?」
「授業をクイズ大会にしたんじゃ」
「クイズ大会!?」
「パーティーグッズで早押しボタンの玩具があるじゃろ?あれを利用したんじゃ。生徒には指定したテキストのページを予習させたうえで授業に臨ませ、わしがテキストから問題を出し早押しで競わせるという内容じゃ」
「盛り上がりましたか?」
「予想以上に盛り上がった。わしは予習の必要がなく、クイズの出題者という体でテキストを読むだけで良いという点が大きなメリットじゃった。ただ慣れてくると、歴史上の人物、例えば源頼朝の肖像画を黒塗りにして「シルエットクイズ」にしたり、年号の計算問題、例えば、「大化の改新+関ヶ原の戦い(645+1600)=2245みたいな感じでどんどん凝っていったな」
「それはすごいですね」
「ところがじゃ、ある日そんなわしの授業に関してAくんのお母さんからクレームが入ったんじゃ」
「あーっ、ふざけすぎということですか?」
「いや、ちがう。お母さん曰く「今日うちの息子が泣いて帰ってきたんですよ!クイズ大会に参加できなかったって」
「参加できない?」
「早押しの玩具は6人仕様でクラスの生徒数は7人だったので、予選という名の小テストをやって6人に絞るんじゃ。その日Aくんは本選に参加できなかったんじゃ」
「それでどうされたんですか?」
「お母さんに事情を説明して納得してもらったんだが、その日を境にしてAくんは苦手だった社会をメチャクチャ勉強するようになったんじゃ」
「なるほど。それで、生徒の成績はどうだったんですか?」
「わしが担当になった頃のクラス平均偏差値は48ポイントくらいだったんじゃが、2週間後くらいに週ごとのテストの平均偏差値が50ポイントを超え出したんじゃ」
「なんとなく想像できますね」
「わしもそのあたりまでは想定していたんじゃが、6月の全国模試で社会の平均偏差値が全校一位になったんじゃ。しかも二位のクラスと8ポイント差の73ポイントじゃった」
「クラス平均偏差73ポイント?!僅か3ヵ月で48から73!?驚異的な伸びですね!」
「わしも驚いた。しかも授業では何も教えていない結果じゃ。生徒が勝手に勉強してきてクイズ大会やっているだけじゃ」
「なんかちょっと複雑な感じですね」
「わしも当時そう思った。『こんなことで成績が上がるのか!』と。そこで悟ったんじゃ。【人に何かを教えるとき指導内容に精通することは重要だが、それだけではないというか、それ以上に重要なポイントがあるのではないか?】と」
「重要なポイントとは?」
「【動機付け】じゃ」
「動機付け…」
「人は何らかの動機によって行動を起こす。受験勉強であれば【志望校に合格したい】という気持ちが動機じゃろう。しかし小中学生にとってその動機は受験勉強という行動の強化に繋がりにくい。だからもっと身近で【少し頑張れば達成できる目標を設定】し、その目標を達成できれば【ご褒美=好子】をゲットできるという方略が有効なんじゃ」
「なるほど…ご褒美か…モノで釣るってことですよね」
「そういう言い方もできなくはない。しかし今回の社会のケースはモノではなく、ゲームに勝つという【達成感】じゃ。クイズ大会で優勝しても賞品は与えていなかった。このように【精神的な喜び=好子】にすることも可能なんじゃ」
「授業にゲーム性を持たせたのはこのときだけですか?」
「いや、この経験はその後のわしの授業に大きな影響を与えた」
「つまり、中学生の英語の授業にも汎用されたということですか?」
「その通りじゃ」
「次回はそのあたりのお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「構わんが…ミズナラ1本ということで」
「誰かに影響されていませんか?」
「何のことじゃ?最近物忘れが激しくてな」
「……」
*人物名等はフィクションです
*参考書籍:「行動分析学入門」杉山尚子 著
「成績が上がる学びの習慣」細野沙良 著
「デキる大人の勉強脳の作り方」池谷裕二 監修*drawn by 蒼りんごさん
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