ボイスコラム11 ー入試直前期の成績下降ー
入試直前期のラストスパート
こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。H高校を目指している大山良太くんが最終模試の結果を持ってきてくれました。表情は冴えません。
*「塾ジイのBAR」のリンクは大山良太くんの話ではありませんが、関連事項の為記載しました。
“ムチュウ”の努力
「最後の模試の結果はどうじゃった?」
「結局H高校の合格判定はBだったよ…」
「そうか…だがそれは不安材料ではない」
「えっ?でも塾ジイ『11月の成績をそれまでのベストレコードとし、右肩上がりにすることが重要』って言っていたじゃないか!」
☞「塾ジイの部屋」7 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5121048/
「そうじゃな。だが『A判定を取れ』とは一度も言っとらん」
「た、確かに…。でも結局一度もA判定(合格率90%以上)にならなかったということはその集団に入れていないということじゃないの?」
「その時点ではな」
「その時点?」
「そうじゃ。模試が実施された時点での話じゃ。今はそれから数週間経っている。この最終模試後の取り組み、言い換えれば“データ無き後の“ムチュウ”の取り組み”が極めて重要なんじゃ」
「夢中に頑張るってこと?」
「その夢中ではなく“五里霧中”の霧中じゃ」
「あ、霧の中か…え、つまり先が見えない中で頑張れってこと?」
「その通りじゃ。模試のデータは模試の受験時、もっと言えばその約一カ月前の学力を表している。逆に言うと今の学力を表していない、むしろ今の学力は更に上昇していると考えた方が良い。模試の結果はあくまで“途中経過”じゃ。模試データが全て出揃った後の取り組みがラストスパートのかけどころじゃ」
「ラストスパートか…何をすれば良いの?」
「これまで蓄積してきた模試や過去問の洗い直しじゃ。具体的には…
①成績が悪かった模試・過去問の見直し
②正答率50%以上で不正解だった設問の見直し
③弱点ノートの見直し
☞「塾ジイの部屋」4 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5116677/
☞模擬試験活用レシピ https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5119681/
これらを実行し今までの失敗を成功への起爆剤にするんじゃ」
「成功への起爆剤…」
「苦しみや悔しい思いをした過去の経験を一気に成功への踏み台に変えるんじゃ」
「失敗の過去を成功への踏み台に…そういえば『過去の事実は変えられないがその意味合いは変えられる』って塾ジイ言っていたな…」
☞「塾ジイの部屋」6 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5119313/
「そうじゃ。今こそ過去に味わった負の感情を爆発させ一気に昇りきるんじゃ。苦しいとは思うがここからは“根性論”じゃ。自分の弱さに向き合う勇気と行動力が合否を左右する。簡単に言うと他の受験生との我慢比べじゃ。自分も苦しいが相手も苦しい。ここを頑張り抜く者が栄冠を勝ち取るんじゃ」
志望校との出会いを味わい尽くす
「でも…やっぱり不安だな…」
「学校の先生も塾の先生も『思い切って挑戦したら?!』って言ってくれたんじゃろ?」
「それはそうなんだけど…」
「お父さんとお母さんが第二志望校を徹底的に調査し、三者懇談でしっかり学校の先生と話をしてくれたおかげでH高校の挑戦権を得られた。これはすごい幸運なことじゃ」
「幸運?」
「そうじゃ。魅力ある第二志望を担保できたからこそ学校の先生も『思い切って挑戦したら?!』って言ってくれたんだと思う」
☞「塾ジイのBAR」2 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5114987/
「……」
「だから、お父さんとお母さんには感謝しないとな」
☞「塾ジイのBAR」3 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5120214/
☞「塾ジイのBAR」4 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5120566/
「う、うん、わかったよ」
「それとじゃ、今の不安感や緊張感は良太がH高校と出会っているからこそ味わえるんじゃ」
「どういうこと?」
「H高校に魅力を感じてここまで頑張ってきたんじゃ。それだけでも大きな出会いじゃ。更に言えば、合格できればそれに越した出会いは無いが、たとえ不合格でもその後の行動次第でH高校と出会い続けられるんじゃ」
「不合格でもH高校と出会い続ける?」
「万一H高校が不合格で第二志望のT高校へ入学することになったとしても、H高校生以上に努力し、K大学へ行くことができたなら、『H高校を目指し、あの悔しさを味わったおかげで…』という思いを持てるじゃろ。それもまた立派なH高校との出会いじゃ」
「な、なるほど」
「受験前に緊張や焦燥、諦めという“嫌な気持ち”は全て『H高校へ入学したい!』という思いから湧き上がっているんじゃ。それらの感情を受け入れ、H高校との出会いを味わい尽くすんじゃ」
「わ、わかったよ」
「わしも二日酔いという“嫌な体調”を全て受け入れ日本酒を味わい尽くしておる」
「なんか無理があるな…」
「やっぱりか…」
*この記事はフィクションです。人物名は全て架空のものです。
いよいよ受験シーズン到来ですね。この時期受験生本人はもちろん、親御さんにとっても
「胃の痛い時期」になりますよね。私もよく「この時期に何をすれば良いか?」という相談を受けます。本試験が刻々と迫ってくる中でのそのようなご相談は当然です。ここでのポイントは【新しいことに手を出さない】ことです。塾ジイも言っているように、これまでの模試や過去問の見直しが最も効果的なのです。つまり“直前期の学習のネタ”を模試の事後処理等の作業を通して今まで仕込んできたということなんですね。【インプット→アウトプット→再インプット→再アウトプット】というサイクルが脳科学的に最も効率性が高い学習方法だと言われています。この方策のメリットはもう一つあります。それは“安心感”です。初見の教材や問題を目にし「わからない・できない」といった不安感を味わうことなく、「一度やったことがある」という“安心感”を持って処理できるんですね。新たな問題集をやるよりも効率的で効果的ですのでご参考になさってください。
この時期はお子さま、親御さまとも精神的に不安定になりがちですが、塾ジイが言う【志望校との出会いを味わっている】と捉えていただき、残された日々を有意義にお過ごしいただければと存じます。
次回は入試当日のポイントについて考えます。
*参考文献:「東大教授が教える!デキる大人の勉強脳の作り方」池谷裕二 監修
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