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「塾ジイの部屋」6 ー模擬テスト活用法 その3ー

2022年9月15日 公開 / 2024年2月16日更新

テーマ:模擬試験活用法

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

コラムキーワード: 高校受験 勉強法勉強法 おすすめ大学受験 対策

素材のうま味を活かし切る~成績データ活用編~

「模試試験 ちょっと工夫で この凄さ!」

こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。今日も以前お母さんから相談を受け、夏休みから塾に通っている大山良太くん(中3)が2週間前に受けた模擬試験の成績表を持ってきました。足取りは重く表情も冴えません…

*ここまでのお話は「塾ジイの部屋」4・5をご参照ください
「塾ジイの部屋」4 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5116677/
「塾ジイの部屋」5 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5118656/

“ヤル気依存症”からの脱却

「模試の成績表持ってきたよ」
「おう、気になっていたんじゃ。判定はどうじゃった?」
「見ての通りだよ。結果は最低ランクのEだよ。H高校合格圏外だってさ」
「そうか。上々の結果じゃな」
「はっ?それって慰めのつもり?」
「いや、そんなつもりはない。本心じゃ」
「夏休みそれなりに頑張ったつもりだったからもう少しマシな成績だと思ったんだけどな。H高校諦めて、A高校のスポーツ推薦にしようかな…」*「塾ジイの部屋」1参照 1 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5112568/
「スポーツ医学を学びにK大学へ行く予定はどうなるんじゃ?」
「“予定”じゃないよ。“夢”だよ」
「えっ?H高校に入学する予定で塾へ行ったのではなかったのか?」
「“予定”ってそれが決まったときに使う言葉だよ。まだH高校へ行くかどうか決まってないよ」
「本気じゃないな」
「えっ?何が?」
「H高校へ行きたいというのは本気じゃないな」
「な、なんでそんなこと言うんだよ!これでも結構夏休み勉強したんだよ!」
「それはわかっとる」
「じゃあ、なんでそんなこと言うんだよ!?」
「本気じゃないから“諦める”という言葉を簡単に口に出来るんじゃ」
「うっ…」
「この前話したように模擬試験は練習試合じゃ。結果に一喜一憂することなく、それを踏まえて今後の“作業”の計画を練り直し、それを淡々とこなしていくのじゃ」
「『ヤル気は要らない』だったな…」
「よく覚えているな。その通りじゃ」

答案用紙+成績表+テキスト=最高のオリジナル教材

「この前アドバイスした試験の見直しは実行できたのか?」
「う、うん。塾ジイに言われた通り一通り見直したよ」
「どうじゃった?」
「忘れてしまっていたり知らないことが多かったよ。問題の読み間違いも結構あったし…」
「それは良い気づきじゃ。ところで、学習計画は立て直したのか?」
「いや、まだだよ。それを塾ジイに教えてもらおうと思って来たんだよ」
「そうか…この前アドバイスした試験直後の見直しは、持てる知識を如何に引き出したか、つまり“戦術” の振り返りじゃ。それに対して成績表のデータを踏まえた復習は戦術を練る上での基礎体力の確認じゃ」
「基礎体力?」
「志望校に合格するために必要な知識が身についているか否か、言い換えれば、入試で勝負出来る集団にいるかどうかの確認じゃ」
「どうやって確認するの?」
「成績表に問題ごとの受験生全体の正答率が載っているじゃろ?まずは正答率50%以上の問題で正解出来なかった問題をピックアップするんじゃ」
「正答率50%以上…」
「正答率が50%以上の問題を間違ったということは、“二人のうち一人は正解しているのに自分は取れなかった”ことを意味する。ここは早急に手を打たないといかん」
「半分以上の人が出来ることが自分は出来でいないということか…」
「いわゆる基礎力が身についていないことの表れじゃ。ここは徹底的に復習しておく必要がある」
「なるほど。あと、正答率50%未満の問題は?」
「20%を切るような問題は出来ていなくても気にする必要はない。H高校なら併願校のレベルを踏まえて30%までの問題を押さえておけば十分だと思うが、念のために塾の先生に相談するのが良かろう」
「復習のポイントがあれば教えてよ」
「テキストと問題用紙に“リンクを張る”んじゃ」
「リンク?」
「復習した問題の横に該当する塾のテキストのページ数をメモしておくんじゃ」
「足跡を残すのか…」
「同じようにテキストにもメモするんじゃ。どの模試のどの問題の復習の際に参照したかを。そして最も多く参照した単元を優先的につぶしていくんじゃ」
「ちょっと手間だな」
「このひと手間が入試直前1か月に威力を発揮するんじゃ」
「直前1か月?」
「そうじゃ。直前1か月に失点した事項の再復習は効果的じゃ」
「試験の復習はその準備作業ってこと?」
「その通りじゃ。弱点を一元化したうえでの直前期の復習は非常に効率が良い」
「なるほど」
「繰り返すが、受験勉強は全てが作業じゃ。“計画を立て実行する”それだけじゃ」
「わかったよ」

過去は変えられる?

「とは言うものの…どうしても行動に移せないときもある。気持ちの棚上げは言うほど簡単に行かないのが人情じゃ」
「う、うん」
「しかしじゃな、ヤル気が出ないにもかかわらず目の前の課題に全力で打ち込んでいると、ふと思いつくことがある」
「何を?」
「過去は変えられるということじゃ」
「過去を変えられる?どういうこと?」
「今回の模試の結果が厳しかったことは間違いない。それをいくら悔やんでもその結果は変わらない。しかしその現実を素直に受け容れ、目の前のことに全力を尽くして一歩ずつ進んで行けば、いつの日か『あの模試が最悪だったおかげでその後頑張れた』となるかもしれん。つまり過去の事実は変えられないが、その“意味合い”は変えることが出来るということじゃ」
「過去の意味合い…」
「そう考えると今回の結果はむしろ良かったと捉えることも出来る。ここが踏ん張りどころじゃ。過去を振り返らず、イヤイヤでも辛くてもその気持ちを棚上げし、淡々と目の前の作業をやり続けるんじゃ。部活のランニングを思い出せ。“いま、ここ”に集中するんじゃ」
「わかったよ。とりあえずやってみるよ」
「そうじゃ!その“とりあえずやる”のが重要じゃ。あっ、一句浮かんだぞ」
「何が?」
「“テストにて 泣いた分だけ 春近し”これ、どうじゃ?」
「イマイチ!」
「そうか…けっこうイケると思ったんじゃが…」
         ◆◆◆
良太は来たときよりは少しだけ軽い足取りで帰っていきました。私は直ぐにお母さんに電話をかけ次のことを伝えました。
「模試の結果は正直かなり厳しかったが気にする必要はない。今彼は分岐点に立っている。今後数週間の行動が合否を分けるじゃろう。やるべきことは全て本人に伝えた。色々言いたいことがあっても静かに見守るんじゃ。もし何か困ったことがあれば塾の先生に相談するように」

*この記事はフィクションです。人物名はすべて架空のものです。
 

模試の成績は本人も親御さんも非常に気になりますよね。悪い結果が出てしまうと意気消沈し、「もうダメなのではないか?」という不安に襲われます。しかし、模試の結果はあくまで“途中経過”なので逆転のチャンスはまだまだ残されています。ポイントは成績データから課題を抽出し、その情報を日常の学習ツール(ノートやテキスト)に落とし込むことです。このことを本人に伝えることが重要です。つまり“作業の手順”を提示するということですね。
塾ジイが言うようにヤル気に依存してしまうと行動が阻害されます。感情を棚上げし、“やり続ける”ことが重要です。ですから「もっとヤル気を出しなさい!」という声掛けは解決に繋がるどころかむしろ逆効果です。ヤル気とは“心の強さ”です。心が強いからやるのではなく、やり続けられるから心が強くなるんですね。

*参考文献:
 「嫌われる勇気」岸見一郎 古賀史健 著
 「情報戦を制して合格する勉強法」小林 尚 著 
*今回のサブタイトル「模試試験、ちょっと工夫で、この凄さ!」は料理研究家の故神田川俊郎さんのキャッチフレーズ(例「玉ねぎも ちょっと工夫で この美味さ!」)を参考にさせていただきました

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この記事を書いたプロ

久保克己

子どもの受験で悩む保護者にアドバイスする教育相談のプロ

久保克己(株式会社京進)

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