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「塾ジイの部屋」5 -模擬テスト活用法 その2ー

久保克己

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テーマ:模擬試験活用法

素材のうま味を活かし切るレシピ~事後対応編~

その悔しさは夢実現への第一歩

こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。昨日模擬試験を終えた大山良太くん(中3)が浮かない顔でやってきました

*ここまでのお話は「塾ジイの部屋」4をご参照ください

「どうじゃった、模擬試験の結果は?」
「まだわかんないよ。答案は今週末に却ってくるみたいだから」
「試験当日に配布される解答・解説を見れば大体の点数が予想出来るだろ?」
「貰ったけど未だ見てないよ。それに自分の解答覚えていないし…」
「しまった!言うのを忘れとった」
「何を?」
「模擬試験を受験する際、すぐに復習できるように問題用紙に自分の解答を書き込んでおくんじゃ」
「なるほどね。でも、それを聞いていても復習はしてなかっただろうな」
「どうしてじゃ?」
「あまりに出来なさ過ぎた…答案を見返す気になれないよ」
「出来なさ過ぎか…良かったじゃないか」
「はっ!?人が落ち込んでいるのによくそんなこと言えるね!」
「いや、ここが成績向上のチャンスなんじゃ」
「チャンス?どういうこと?」
「模擬試験の効果を最大限活かすポイントのひとつが“受験直後の復習”じゃ。特に出来なかった問題の復習はかなり有効じゃ。間違えたりわからなかった答案と向き合うのは嫌じゃろうが、これをやっておくと後々威力を発揮するんじゃ」
「ふーん…次回からやってみるよ」
「今からでも遅くない。成績表が返却されるまでに正解出来なかったと思われる問題の見直しをしておくと良い」
「なかなかヤル気にならないよ」
「ヤル気はどうでも良い」
「えっ?」
「受験勉強にヤル気は必要ない」
「どういうこと?」
「じゃあ、訊くが、ヤル気になって毎日風呂に入ったり、歯を磨いたりしているのか?」
「そ、それは一日の作業の一部だからヤル気とは関係ないと思うけど」
「受験勉強も作業じゃ」
「えっ?」
「部活の練習を思い出してみろ。ランニング等の単純作業は『ヤル気があるときはやる、無いときはやらない』では成り立たんじゃろ」
「確かに…」
「そんな日頃の作業を経て臨む模擬試験は部活の練習試合と全く同じじゃ」
「練習試合?」
「そうじゃ。サッカーの練習試合で負けたとき何をしていた?」
「すぐに反省会やって敗因を考え、練習の計画を練り直したよ」
「そうじゃろ?模擬試験も全くそれと同じじゃ」
「……」
「失敗の原因を分析し、それを踏まえて勉強の計画を立て直すんじゃ。悔しさという感情を如何に次への飛躍に繋げるかが重要じゃ。じゃから、練習試合である模擬試験の失敗は大きな収穫でもある」
「負けが大きな収穫か…。サッカー部の顧問の先生も同じようなことを言っていたな」
「そもそも“悔しい”という思いはそれなりに努力したから味わえるものじゃ。適当にやって失敗しても『まあ、こんなもんか』『仕方ないな』という言い訳が先立つものじゃ。悔しい気持ちが湧き上がるのはむしろ良い傾向じゃ」
「なんかよくわからないけど少しヤル気になってきたよ」
「ヤル気に頼るな。どんな気持ちになっても“作業”としてこなすのじゃ」
「わ、わかったよ」
「模試の成績表が出たら持って来い。この続きはそのときに話すよ。さてと、よっこらしょ…」
「なんで冷蔵庫開けてるの?あ、またビールを飲もうとしている!」
「飲みたいのではない。これも“作業”の一環じゃ」
「そう来ると思ったよ」

良太くんのように模擬試験の結果が思っていたほどでなかった場合、モチベーションが大きく低下する可能性があります。ある程度努力したお子様なら尚更です。しかしここが踏ん張りどころです。嫌々でも模試の結果に向き合い、出来なかった問題を復習すれば大きな成果が望めます。そのことをお子様に認識させることは意外と重要です(塾や学校でも指導されていると思いますが)。
復習は問題の解き直しや解説を読むだけで効果はありますが、ちょっとした工夫で効率よく“ウイークポイントの把握”をすることができます。その工夫とは、問題を解く際、問題用紙に「解答とそこに至る根拠を記録しておく」のです。つまり自身の“解答へのプロセス”を後で見てわかるようにしておくのですね。例えば
・自分の解答とその根拠(簡潔に)
・当てずっぽうの解答の記号(例:問題の冒頭に「?」を記入する等)
このような事項を走り書きで良いので書き留めておくのです。復習時にその書き込みと問題の解説と見比べると、自身の解答へのプロセスと正解へのそれが可視化され、大きな気づきを得ることが出来るでしょう。
この見直しを3回【例:①試験直後(できれば試験当日)②一週間後③一か月後】やると良いでしょう。特に試験直後の見直しは「どの問題で苦しんだか」の記憶が鮮明であるため大きな効果が期待できます。
親御さんも試験結果に一喜一憂するとは思いますが、良くない結果でもお子様を叱ることなく、先ずは日頃頑張っておられることを褒めてあげたうえで、悪かった模試の復習こそが学力向上への王道であり、ここで味わう悔しさ、もどかしさは合格への道標であることを伝えることが出来れば、飛躍の種を植え付けられたかもしれません。
次回は模擬試験の成績表について考えます。

*この記事はフィクションです。人物名はすべて架空のものです。
 

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株式会社京進

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