模擬テスト活用レシピ
素材のうま味を活かし切るレシピ~事前準備編~
バーチャル体験を最大限活かせ!
こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。今日は以前お母さんから相談を受け、夏休みから塾に通っている大山良太くん(中3)が久しぶりにやってきました。
*ここまでの内容は「塾ジイの部屋」1~3をご参照ください
「塾ジイの部屋」1
「塾ジイの部屋」2
「塾ジイの部屋」3
「塾ジイ!これお母さんからの差し入れ」
「おう、また牛肉のしぐれ煮か…、いや違う。あ、カツサンドか!」
(大山精肉店のカツサンドは牛肉しぐれ煮と並ぶ名物料理。先日もテレビの旅番組に出たところだ)
「ありがたい!これはやっぱりビールだな… ところでどうじゃ、勉強の調子は?」
「自分なりに夏休みは頑張れていると思っているんだけど…」
「そうか、それなら良かった。先ずは第一関門突破というところか」
「うーん…手応えがよくわからないよ。そうそう、9月に塾で模擬テストがあるんだ」
「なるほど。進学塾は秋以降毎月のように模擬試験で学力を診断するからな。成績表にH高校の合格判定が出るじゃろうから今後の学習計画を立てるうえで参考になるじゃろう。試験に向けての準備はしているのか?」
「いや、総合範囲なので特に何もしていないよ」
「はっ?…すまん…最近耳が遠くなっての…もう一度言ってもらえんかな?」
「もぉー、塾ジイ二日酔い?“総合範囲”のテストなので何も準備していないよ」
「信じられん!」
「何が?」
「模擬試験を準備せずに受けるなんて信じられん!」
「えー!? でも範囲が無いから勉強しようがないよ」
「なんでそう言い切れる?」
「だって学校の定期テストのように出題範囲があればそこを勉強すれば良いけど、範囲がわからなかったら勉強しようがないよ」
「ならば、自分で範囲を決めれば良いではないか」
「自分で?」
「よく聞くんじゃ、良太のように『今さら模擬テストの勉強をしても意味ない』という声を」
「どの単元の問題が出るかわからないから仕方ないよ」
「入試はどうなんじゃ?」
「えっ?」
「入試も出題される単元がわからないから勉強しても意味がないのか?」
「そ、そんなこと…」
「ひとつアドバイスしておこう。模試が入試本番のつもりで自分が弱点だと思う単元をひとつだけ選び、そこを徹底的に勉強するんじゃ」
「ひとつだけ選ぶ?」
「そうじゃ。例えば英語の不定詞が苦手と思うなら“模試で不定詞のどんな問題が出題されても絶対に正解するぞ!”という気概で勉強するんじゃ」
「それで不定詞の問題が一問も出なかったら?」
「それは仕方がない」
「はっ? 何それ? そんなの全く意味ないよ!」
「なぜ意味がないんじゃ?」
「だって、せっかく勉強したのに点数に繋がらなかったら努力が無駄になるよ」
「何の点数に繋がらなければ無駄になるんじゃ?」
「何のって、試験に決まってるじゃないか!」
「何の試験じゃ?」
「何言ってるの?!模擬試験の話だよ!」
「何のために塾へ行って勉強しているんじゃ?」
「そりゃ、H高校に入るためだよ」
「そうじゃろ。模擬試験で高得点を取るために塾へ行っている訳ではなかろう」
「……」
「目の前のことに振り回されるべきではないが、それが将来に活かされるような取り組みをすることが重要じゃ」
「将来に活かされる取り組み…」
「今回の試験に向けて苦手分野をしっかり勉強しておけば、たとえその試験で出題されなくても“苦手分野を勉強した”という事実は今後の模擬試験、或は本番の入試に活かされる可能性がある」
「なるほど…自分でテーマを決めて準備することがポイントということか」
「その通りじゃ。模擬試験を受ける目的は色々あるが、重要なのはその目的に見合った対策を講じることじゃ。高い受験料の元を取らないともったいない」
「わかったよ。科目ごとに苦手を決めて次の模擬試験に合わせて勉強する計画を立てるよ」
「それが良かろう」
「あとは模擬試験に向けて気を付けることある?」
「そうじゃな…そうそう、“振り返りシート”を作っておくとあとで役に立つぞ」
「振り返りシート?」
「模試を受けた際の気づきを書き留めておき、それを次回以降の試験に生かすんじゃ」
「気づき? どんな?」
「例えば時間配分・問題を解く順序・準備の良し悪し等を試験の都度書き留め反省材料にするんじゃ。『○番の問題で時間を使いすぎた。後回しにすべきだった』のように後で見てわかるよう簡潔に記録すると良い」
「なるほど」
「あと気持ちの振り返りもしておくと良い」
「気持ち?」
「試験中の自分の気持ちじゃ。“超緊張した”“イライラした”等を振り返り試験での気持ちの傾向を客観的に把握するんじゃ」
「学力以外の課題や弱点を把握するってことか…」
「一言で言うとそういうことになるな」
「わかった!塾ジイのアドバイスを参考に準備するよ。ところで塾ジイにも振り返りシート作ってあげようか?」
「わしに? わしは模擬試験は受けんよ」
「いや、お酒を飲んだ後の振り返りシート。“気持ちワクワク”とか」
「だめじゃ。呑んだ翌朝は二日酔いで振り返る余裕など無い。大人になると忘れることも必要なんじゃ」
「意味がわからない…」 (つづく)
秋になると学習塾や予備校で模擬試験が頻繁に実施されます。以前本コラムでもお伝えしましたが、人間の脳は記憶するうえでインプットよりアウトプットを好むと言われています。ですから、アウトプットの機会として模擬試験を利用するメリットは大きいと言えるでしょう。しかし、“ただ受けるだけ”では塾ジイも言っていたように高額の試験料の割に合いません。模擬試験受験の目的は【①受験の疑似体験②弱点の把握③学力の現状把握】です。今回の塾ジイのアドバイスは上記①②に依るものです。特に【①受験の疑似体験】は非常に重要です。“場数を踏む”ことはどんな場合でも重要であることはお解りいただけると思います。本番さながらの気持ち・環境で模試を受けることは“受験本番へのリハーサル”という観点で極めて重要なのです。次回は試験後のポイントについて考えてみます。
この記事はフィクションです。人物名はすべて架空のものです。
*参考書籍:「東大教授が教える!デキる大人の勉強脳のつくり方」池谷裕二監修
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