対話が作る学力
「モンテッソーリの教育」(あすなろ書房)に、「子どもはどこかに着くことを望んでいるのではないのです。かれはただ歩きたいのであって、かれをほんとうに助けようとするなら、おとなは(自分と)同じ歩調で歩くことを期待したりしないで、かれのあとからついていかなければなりません。子どものあとについていくことの必要性をここで明らかにしましたが、それは、まさに教育のあらゆる側面とあらゆる領域での一般に通ずる規則なのです。」と、あります。
お子様が、学習上で何かわからないことがあると、保護者の方はすぐに教えようとします。
しかし、このすぐに教えようとする行為がお子様の成長を阻害していることが多いのです。
それは、お子様が自分で考える楽しみを味わえなくなるからです。
ところが、見た目には、すぐに教えた方が早く身についたように見えます。
これが錯覚を生み出します。
教えてもらって理解したことは、時間の経過とともに忘れます。
自分の内面から考えて理解したものでないと、それは単なる知識ですから、忘れるのも早いし、ほかに応用することもできません。
当面の成績上昇には役立ちますが、長い目で見ると学力の向上には結びつかないことが多いのです。
では、どうしたらいいかといえば、保護者の方は教えたくなる気持ちをいったん抑えて、ワンテンポ遅く対応するようにするのです。
例えば、お子様が算数の問題でできなかったところを持ってきて、「わからないから教えて」と言ってきたら、そこですぐに教えるのではなく、次のように言います。
「これは難しいね。お母さんにもよくわからないから、もう一度解法を読んでみて、もしわかったら教えてね」
それでもなお、お子様がわからないという場合は、教えてもいただいてかまいません。
しかし、この教えることをワンテンポ遅らせる対応を続けていると、お子様はだんだん自分で考えようとする姿勢を持つようになります。
そして、やがて、すぐ人に聞くのではなく、自分で考えてみる方が楽しいと、思うようになるのです。
生徒が何かわからないことでつまずいているとき、講師が、「教えてあげようか」と言うと、「あ、待って。言わないで。自分で考えるから」と言う子がいます。
人に教えてもらうより、自分でわかりたいというのが人間の本来の姿なのです。
この達成感が新たな学習の意欲につながっていきます。