Vol.13 制限が生み出す自由 〜「54字の文学賞」と創造性の不思議な関係〜
目次
導入)AI利用時に誰もが浮かび始める問い
ChatGPTが最初に世の中に現れてから、私たちの日常は少しずつ、でも急速に変わってきました。
文章を書いたり、アイデアを考えたり、問題を解決したり。
これまで「人間にしかできない」と思っていたことを、AIがさらっとやってのけるのを見て、多くの人が今も毎日のように驚き続けているのではないでしょうか。
でも、その驚きと同時に浮かび上がる感情に、気付き始める人も多くなっているかと思います。
それは、とても大雑把で曖昧な言葉にすると
「人間って、いったい何なんだろう?」
という問いかけです。
ここでは、本来は否定的な意味で利用される『車輪の再発明』という言葉をもじって利用し、
肯定的な意味での語句 ~車輪の『再発見』~
という言葉を使って、再度人間の在り方や価値について触れてみようかと思います。
車輪の再発見がそっと始まっている
AIの進歩は、私たちにそっと「車輪の再発見」をうながしているように思います。
ここでいう車輪とは、上記にも少し触れていますが、人間の本質的な価値や、働くことの意味、学ぶことの大切さ、そして生きることの目的といった、昔からずっと大切にされてきた問いのことを指しています。
新しい技術が生まれたことで、私たちの一部ではこれらの「当たり前」だと思っていたことを、もう一度見つめ直すことになるのではないかと考えています。
まるで、長い間使っていた大切な道具の、本当の意味を初めて知るような気持ちで。
働くって、本当は何だったのでしょうか
「AIに仕事を奪われるかも」という話をよく耳にします。
でも、本当に考えてみたいのは「奪われる」ことではなくて、
「そもそも働くって何だったんだろう」
ということです。
効率性だけを考えるなら、確かにAIの方が得意なことが多いでしょう。
でも私たちが働く時に必要なスキルは本当に「効率だけ」でしょうか。
- 同僚との何気ない会話
- お客様が喜んでくれた時の温かい気持ち
- チームでがんばって乗り越えた時の達成感
そういった「効率的ではない」部分にこそ、働くことの本当の意味があるのかもしれませんね。
AIが現れ、そして多くの人を魅了するほどに発展著しいおかげで、私たちは働くことの意味を、もう一度見つめ直さなければいけなくなっています。
学ぶことの、本当の豊かさについて
「AIが何でも答えてくれるなら、勉強する必要があるのでしょうか?」
極端な意見ですが、今やそんな疑問も持つことが出来てしまいます。
そういえば、Googleが普及した時、私たちはあまり図書館に行かなくなりました。
わたしたちは学ぶことをやめたでしょうか?
また、電卓が登場した時、私たちはもう計算しなくなったでしょうか?
さらにさかのぼり、文字が使用され始めた時、私たちはもう考えなくなったでしょうか?
むしろ、情報を手に入れやすく、また、整理しやすくなったことで、もっと深く考える機会が増えたとは思いませんか?
いい加減、昔ある人々が言っていた通り、AIによって人の仕事が減るなんて考え方がその通りではないことに気付かなければいけません。
AIがある時代に大切になるのは、情報を機械的に覚えることではなく、その情報をゆっくりと心の中で考えて、自分なりの答えを見つけることにあります。
つまり、「知っている」ことよりも「理解して、これまでの世の中にない新しい価値観を創造する」ことが見えてきているのです。
人間らしさという永遠の価値
「人間らしさって何だろう?」これほど古くて、新鮮な問いはないかもしれません。
AIが論理的に考えたり、文章を書いたりするのを見ていると、私たちは改めて人間だけが持っているものについて考えるようになりました。
それは感情かもしれませんし、直感かもしれません。
誰かの気持ちに寄り添う力や、矛盾を抱えながらもそれでも前に進んでいく強さかもしれません。
不思議なことに、AIが賢くなればなるほど、私たちは人間らしさについて深く考えるようになります。
新しい技術が、最も古くて大切な問いに、私たちをそっと導いてくれているのかもしれませんね。
つながりの豊かさ
デジタルの世界が広がる中で、人と人とのつながりの意味も少しずつ変わってきているように感じます。
オンラインでつながることは簡単になり、SNSはこれまでのつながり方の根本的な考え方を問い始めています。
そういえば、私たちは直接的に対面して話し合うときには、最初は警戒し、すぐには信用しないことが普通だと習ってきました。
ところが、インターネット上のつながりは、その隣人がどのような人かをまるで知らないくせに、さもその隣人の発言が誤りのないものだと簡単に信じて疑わず、より積極的な文字でのコミュニケーションをとるようになっています。
ゲームに夢中であるなら、discordのやり取りは、不思議な信頼関係の中で繰り広げられていたりします。
日本の若年層においては、ChatGPTとの会話によって「癒される」と話題にもなり、ニュースにも取り上げられるようになりました。
一方で、一部の人の中では、こういったAIのコミュニケーション領域への侵出を受けて、より人間同士の会話における重要な要素について気づく方も出てきています。
- 表情
- 声の温かさ
- 言葉にならない「間」
「見えない」、「不具合の多い」コミュニケーションの大切さを、私たちは改めて感じていませんか。
新しい時代の生き方を探しましょう
AIと一緒に過ごす時代に、私たちはどんなふうに生きていけばいいのでしょうか。
答えはきっと一つではありません。でも、確実に言えることは・・・
これまで当たり前だと思っていたことを静かに見つめ直して、自分なりの大切なものを見つけていく必要があるということです。
それは何か新しい価値観を無理に作ることではなく、本当はずっと大切だったものを再発見することなのかもしれませんね。
- 家族との何気ない時間
- 友人との心の通った会話
- 自然の中でほっとする瞬間
- 何かを作り上げる喜び
- 誰かのお役に立てた時の温かい気持ち・・・
結び)再発見の重要性に気付きましょう
AIの進歩はこれからもきっと止まることはありません。
そして、それと同時に私たちの「再発見の重要性」も大きくなっていくでしょう。
技術が進歩すればするほど、私たちは人間の本当に大切なところに立ち返ることになります。
それは決して後戻りではなく、もっと深く、もっと豊かに。
人間らしく生きるための道を見つける、とても大切な過程なのです。
AIが私たちに示そうとしている「車輪の再発見」。
そこには、私たちがより豊かに生きるためのヒントが、実は最初からすぐそばにあったということを教えてくれているのかもしれませんね。




