Vol.60 「この壺は満杯か?」--有名なたとえ話について。

~AI時代の市民参加をどう育むか~
みなさんは「デジタル民主主義」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは単なるテクノロジーの話ではありません。私たちの子どもたちが、これからの社会で「意見を持ち」「話し合い」「協力して決めていく」力を育むために、非常に重要な考え方です。
これは台湾の元デジタル担当大臣であるオードリー・タンさんが提唱する「デジタル民主主義」の考え方ですが、最近「PLURALITY」という本を読んでいてとても考えさせられる内容が多いため、ぜひ教育や子育ての視点からも紹介したいと思います。
PLURALITY 対立を創造に変える協働テクノロジーと・・
AIが人の意見をまとめる時代に
AIというと、「効率化」「自動化」「仕事が奪われる」といった話題が先行しがちです。でも、タンさんが強調するのは、それとは少し違います。
AIは「対立を深める道具」にもなりますが、正しく使えば「対話を進める道具」にもなる。特に重要なのは、意見の違いを見える化し、その共通点を見つけるという役割だそうです。
たとえば、学校で意見の分かれる話し合いがあったとき、生徒たちがAIの助けを借りて、それぞれの主張の中に「実はみんな大切にしている価値観」があったと気づけるとしたら・・・
それは、単なる合意ではなく、~本当の意味での「納得」と「協力」~につながるということです。
「賛成・反対」ではなく、「どこが共通していて、どこが違うのか
従来の意思決定では、「多数決」や「賛否」で結論を出すことが一般的でした。でも、それだと少数派の声がかき消されてしまうことも、もちろん出てきます。
デジタル民主主義な考え方においては、AIが市民(あるいは生徒)の意見を分析し、
- 「みんなの中で共通しているポイントはここ」
- 「分かれているのはこの点」
といった形で構造化して見せてくれます。
このことで、議論は「勝ち負け」ではなく、「理解し合い、より良い案を探す」プロセスに変わっていくのです。
子どもたちに伝えたい「対話の力」
今は特に、SNSなどでの分断や炎上が大きな問題になっていますね(><)
悲しいことです。
ですが、その背景にはきっと「意見を聞き合う力」や「多様性を受け入れる土壌」が育っていないことがあるのではないでしょうか。
教育の現場や家庭でこそ思い出したいのですが、こうした
「違いを超えて対話する姿勢」
を育むことがとても大切だと思うのです。
デジタル民主主義の仕組みは、その土台を支える大きなヒントになりえます。
保護者や教育者としてできることは何か
子どもの意見を例えば今の時代ならではとして、こういう方法があります。
それは・・・・
『一度AIに入力して「どういう考え方なのか」を一緒に整理してみる』
ということです。
これは、もしかしたらこのような文章を読むと、反射的にまるで子供のことを考えていない親がすることだと批判される方もいらっしゃるかもしれませんし、これまでの道徳観からは離れているようにも聞こえるかもしれません。
しかしここで言いたいのは、そもそも、子どもの意見を聞いたり対話したりしない家庭が増えていないかという問題提起と、それを解決するための、例えばのツールとしてAIが活用できるのではという提案です。
- 授業や家庭で、多数決ではなく「どの意見も大切にする」話し合いの練習をしてみること
- 「正解」を求めるよりも、「みんなでよりよい答えを探す」経験と、その手段(選択肢)を増やすこと
AIの進化に代表されて、一気に進むこれからの情報化社会では、「声の大きい人」や「多数派」が全てではなくなるのでしょう。ある意味「声が大きいだけの人のうそ」がわかりやすい時代にもなります。
むしろ、小さな声に耳を傾けられる人こそが、本当のいみでの未来をつくるリーダーになっていくとより良いかと思います。
おわりに
デジタル民主主義では、技術の話のようでいて、実は「人を大切にする力」を育てる取り組みに焦点が当てられています。
AI時代だからこそ、「人の意見に耳を傾ける力」や「対話で前に進む力」を、子どもたちに贈りたい。
そんな想いを、教育や子育てに関わるすべての方と共有できればと思います(*^^*)



