Vol.59 学びのゴールは「楽しむこと」だった?──論語から考える教育の本質

親や周りの大人が子どもを「大人として」扱えば、子どもは早く大人になれる。自分はそう考えています。
でもこれは、決して子どもに大人と同じ責任を負わせるという意味ではありません。
むしろ、一人の人格として尊重し、対等な対話を心がけることで、子ども自身の成長を促すアプローチのことです。
今日は、自分が運営しているプログラミングスクールなどでも実践している考え方やアプローチについて共有することで、より多くの保護者さまや大人にも気づきとなればと思いつつ綴ることとします。
なぜ「子ども扱い」が成長を阻むのか
大人が子どもとコミュニケーションを取るとき、こんな態度で接していませんか?
「あなたにはまだわからないだろうけれど」
「あなたに言っても仕方ない」
「大人の話だから黙っていて」
このような接し方をされた子どもは、きっとこう思うでしょう。
「あの大人(親)は、自分の言葉を聞いてくれない。言っても仕方ない。」 「人の言うことなんか聞かなくてもいいや。どうせ見てもいないんだから。」
つまり、大人が子どもを「まだ未熟な存在」として扱うことで、子ども自身も「どうせ自分はまだ子どもだから」とか、「大人という存在自体を忌避」するといった思考に陥ってしまうのです。
ピグマリオン効果が生み出す「予言の自己成就」
心理学の中には「ピグマリオン効果」という現象があるそうです。これは、「期待されることでパフォーマンスが向上する」という効果です。
ピグマリオン効果とは
人は、他者から期待されると、期待に沿った成果を出す傾向にあるという現象のことを指し、「教師期待効果」または「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。
この効果の名前は、ギリシャ神話に出てくる王様ピグマリオンが、自分の理想とする姿の女神の像を日々愛でていると、ついにその女神に命が宿り結婚することが叶ったというお話に基づいて、ピグマリオン効果と名付けられたようです。
アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが行った有名な実験では、ランダムに選んだ数名の児童について「今後成績が伸びる生徒」として教師に知らせると、その児童たちの成績が他の児童よりも優位に伸びるという結果が得られたと、そんな少しびっくりするような効果について発表されています。教師の意識は生徒に「伝搬」しており、それにより生徒の向上心につながったというのです。
さて、私たちの周りの子どもたちに対しても同じことが言えます。もし子どもとちゃんと等身大で対話し、「一人前として期待してあげる」ことができれば、子どものパフォーマンスは格段に向上するはずです。
「自分はもう大人だ」
「認めてもらえている」
このように感じた子どもは、それまで考えもしなかった思考方法や、大人らしい行動を取るようになりますし、結果的に、子どもが自分自身で大人になっていくのです。これはまさに「予言の自己成就」と言えます。
具体的にはどう接すればいいのか
では、具体的にはどのように子どもと接すればよいのでしょうか。
避けたい接し方
- 「あなたにはまだ難しい」と決めつける
- 一方的に指示を出す
- 子どもの意見を聞かずに決める
推奨したい接し方
- 「一緒に考えてみよう」という姿勢
- 「あなたはどう思う?」と意見を求める
- 年齢に応じた言葉で、きちんと説明する
バランスの重要性
ただし、ここで重要なのはバランスだと思っています。
現実問題として、子どもの認知発達や情緒発達には段階があるのは当然です。だから、年齢に応じた適切なサポートを忘れてはいけないということです。
いきなり「あなたは自由だからね!」とか「あなたの人生だからあなたが考えるのよ!」などから入ってしまうと、残念ながら逆効果が生まれ始めるかもしれません。
そういう知識を先に知って育ってしまうと(※順序のこと)、学校や友達とのコミュニケーションにおいて
「それは僕の自由でしょ!」
「人のことなんか知らない!わたしはこれがやりたいの!」
なんて、「自分の権利ばかりを何よりも優先するような言葉」を、小さな時だけではなく、中学生や高校生になっても使うようになってくるかもしれません。
「大人として扱う」ことと「年齢に応じた配慮をする」ことは、決して矛盾するものではありません。
例えば:
- 複雑な問題について、子どもなりの理解レベルで一緒に考える
- 同時に、感情的なサポートは十分に提供する
- 責任は段階的に与え、失敗してもちゃんと支える
このようなアプローチが理想的だと考えます。
まとめ
子どもを「大人として」扱うということは、その子の可能性を信じて、一人の人格として尊重することです。
「適切な期待と信頼」を寄せることで、子どもたちは自ら成長していく力を発揮します(*^^*)
私たち大人に求められるのは、子どもの成長段階を理解しながらも、彼らの潜在能力を信じ続ける姿勢ではないでしょうか。
明日から、子どもとの会話で「一緒に考えてみよう」という言葉を使ってみませんか?
その時の、これまでとは違った反応や表情、「些細な変化」に気付いてあげてくださいね(*^^*)



