AIに翻弄される土地家屋調査士の日常~なぜか忙しくなってしまった~

関太郎

関太郎


30年ほど前、所属していた山岳会の先輩から、「たろぉー、お前Excelも知らねえのかよぉ、だっせぇー」と言われたのがきっかけで、夢中になったExcel。夢中になって、いろいろなシートを作って自己満足に浸っていました。専門家から見れば素人仕事ですが、自分で作ったものが実際の仕事に役立っていく——その実感が、何より楽しかった。

得意げにExcel自慢していた先輩はピエロ的な立ち回りが似合う、不思議な魅力の持ち主でした。クライミングがうまいのか下手なのかよくわからないけれど、絶対に落ちない粘り強さがあって、何よりも皆から慕われていた。そんな先輩のことをふと思い出しました。あれから30年。いま私は、まったく同じ感覚をAIとの仕事に覚えています。

「AIって、文章を作ったり調べ物をしたりするもの」程度の認識でした。ところが実際に使い込んでいくと、発想が変わってくる。「これ、AIでできないだろうか」という問いが、次から次へと湧いてきます。

怪我という思わぬきっかけ

実はこれほど集中するようになった背景には、情けない事情もあります。趣味の登山で肩の腱板を痛めてしまい、現在リハビリ中でお休みを余儀なくされているのです。山へ行けない分、気づけばAIに向かう時間が増えていました。

「登山が再開したら、AIどころじゃないからな、だから今のうちに集中しておこう」——そんな後ろ向きな動機も正直なところ。これぞ、怪我の功名!。早く山に戻りたい気持ちはありますが、この期間に事務所の仕組みをひとつ前に進められれば、それはそれで悪くないなぁと。

気づいたら、ツールを作り続けていた

土地家屋調査士の業務は、実は地道なデータ処理の連続です。登記簿謄本から所有者情報を拾い出す、公図に情報を書き込む、——こうした作業をひとつずつAIと組み合わせていくうちに、気づけば複数の専用ツールが手元に揃っていました。

どれも大したものではありませんが、市販のソフトでは対応していなかった、現場ならではのニーズから生まれたものです。「あったら便利」を一つひとつ形にしてきた、という感覚。Excelのシートを作っていた頃と、根っこは変わっていないのかもしれません。

便利になったのに、なぜか忙しくなった

正直に申し上げると、ツールが増えるほど、余計に忙しくなりました。作る楽しさに引っ張られて、気づけば深夜まで画面に向かってしまう。アイディアがさらにアイディアを生み、いろんなことをやってみたくなる。便利になったはずなのに、なぜか忙しい——

そして、もう一つの課題が見えてきました。ツールを作ることに夢中になるあまり、スタッフへ丁寧に使い方を伝える時間が後回しになってしまっているのです。どんなに優れた道具も、使う人が使いこなせなければ意味がありません。セカンドを置き去りにして驀進する山行パーティのダメなリーダーそのものってことにも気づきました。

「習うより慣れよ」——まず環境を整えた

そこでまず取り組んだのが、スタッフ全員がAIを使える環境を整えることでした。現在、GeminiとClaudeの両方について、全スタッフが個別のアカウントで使用できるようにしています。

私が感じたあの楽しさは、結局「自分でやってみた」から生まれたものです。説明や研修より先に、まず触れる場所を用意することが大切だと思いました。習うより慣れよ。AIはどんどん使ってみることで初めてその面白さがわかるもの——それが私の実感です。

次のステップは「面白さを伝えること」

ツールを作る、からチームで使いこなす——これが今の私の課題です。ただ、使い方を教えることより先に、AIそのものの面白さをスタッフに伝えることのほうが大切なのではないかと思うようになりました。

私自身がそうだったように、「これができるのか」という驚きと楽しさを一度でも体験すれば、あとは自然と使いこなしていけるはずです。事務所全体の仕事の質とスピードを上げるために、まずはその「面白さの体験」をどう共有するか——それがこれからの私のテーマです。

チーム全員が少しずつ使えるようになることで、はじめて事務所としての強みになる——そう思っています。

しかし、AIの進化のスピードは末恐ろしい。数年後、いや数か月単位で、状況が変わっていく。いったいどうなっていくのだろうか……

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関太郎
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関太郎(土地家屋調査士)

関 太郎 土地家屋調査士事務所

土地家屋調査士業とデベロッパーでの企画を兼業してきた実績があり、広い人脈と土地の資産価値を見極めた測量提案が強み。繊細な境界に関わる測量では、隣接者との関係を重視し、"双方の納得"を大切にしています。

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