アンコンシャスバイアスとは
夫婦カウンセリングでお子さんを連れていらっしゃる方が時々います。
こちらでは託児室環境はありませんので
生後1歳ぐらいまではパパかママのお膝の上で
一緒にカウンセリングルームで過ごすか
または、お子さまに待合室で待っていただく
(絵本、ゲーム、お菓子等を用意していただいて)こととなります。
A様の場合は夫婦修復の為の別居を試みることになっていました。
A様御夫婦は御主人の女性問題や金銭的なこと
家事一般の考え方や性格の不一致などで夫婦喧嘩が絶えず
いつも子どもたちの前で罵倒し合ってしまう為に
夫婦が距離を置くという意味で別居を選択しました。
A様は御主人が実家へ、奥様と子どもたちは今の住んでいる家に
残ることになりました。
新しい生活スタイルの中で3ヶ月後
週末の1日だけは家族全員で外で会うこととなりました。
週1日だけは家族みんなで楽しくご飯を食べる、思いっきり遊ぶ
ネガティブなことは忘れる、そして夜はお互いぐっすりと眠る。
そんな「あたりまえの暮らし」に近づく努力をしてみるという目標でした。
別居して半年が経った頃には
スペシャルな旅行やイベントがなくても
家族が一緒になる日は子どもたちも朝早く起きたり、
ママのお洗濯のお手伝いをしたり
パパにお手紙を書いたり、学校の宿題を見せるためにリュックに入れたり
嬉しくていてもたってもいられない
そんなあたりまえの小さな幸せが子どもたちの中で生まれ始めました。
夫婦間では今までは日常の家事分担が忘れられたり
注意しても無視されてイライラしたり
文句ばかり言われ続けていることに腹立たしく感じていたりした日常が
相手がいないことで罵倒するケンカはなくなりました。
不満は静かな時間へと変化しました。
ただ、その変化にだんだんと不安と孤独感が訪れてきました。
「何のために生きているのか」「このままの生活を続けていく意味は何なのか」
楽しいはずの週末だけの時間は切ない孤独感を味わうものとなっていきました。
今までは近すぎて見えなかったものがそこにはありました。
どんなに大切な物もいつもそばにいると
見失って忘れてしまうことはよくあることなのだと思います。
カウンセリングを始めて1年経った頃、
もう一度一緒に家族で暮らすことを決断する日が訪れました。
「パパ…そろそろ帰ってこない?」
と奥様が静かに、でもしっかりした声で御主人に伝えた時
「ああ…ありがとう。帰りたいなと思っていた頃なんだ…
もう一度やり直したいと思っている」
私はお二人の目頭から溢れる涙がとても美しかったことを
今でも覚えています。
「お子さまたちに、ここに呼んで報告しませんか?」
私は待合室で待っている兄弟をカウンセリングルームへと呼びました。
「今日からまたパパとママとみんなで暮らすことになりましたよ…」
その言葉を投げかけたとたん、
兄弟はパパとママの胸に思いっきり飛びついて
わんわん泣いていました。
兄弟同士抱き合ってわんわん泣いていました。
何度も何度もパパとママに抱きついてクルクル踊っていました。
こんなに愛をストレートに表現されること、
こんなに大事にされ愛されることは
長い人生の中でも数少ない
親が経験できる至福な事なのかもしれません。
「あたりまえ」のようで「あたりまえではない」
この時間は私にとっても大きな感謝でした。
あの時の御夫婦はカウンセリングを卒業した後
御報告のお手紙を下さいました。
あれから、何年が経つのでしょう。
純粋な思いで真っ直ぐに愛を信じて
大きな喜びを経験したあの兄弟を思い出した日でもありました。