小さな春
「愛の反対は憎しみではない。 無関心である」
これはハンガリー出身で、ホロコーストの生還者であり
1986年にノーベル平和賞を受賞したユダヤ人作家で
教育者のエリ・ヴィーゼル氏の言葉です。
さらに畳みかけるように
「芸術の反対は醜さではない。無関心である。
信仰の反対は異端ではなく、無関心である。
生の反対は死ではなく、無関心である」と彼の言葉は続きます。
強制収容所での凄惨な体験を経て
圧政や差別、暴力を糾弾し続けた彼の言葉には
生死をかけた重み、歴史的な意義があります。
しかし私たちの生活に置き換えてみると彼のメッセージは
ささやかな日々の暮らしの中にも思い当たることが多々ある気がしました。
例えばいじめ。
いじめられるのは直接の暴力にさらされ苦痛を伴いますが
恐ろしいのは周りの人たちが見て見ぬふりをすること。
味方かと思えば敵よりも冷淡な態度に遭遇し絶望感を味わうことになります。
そのいじめの体験は長い間心の中に傷として残り
その人の生活自体に負の影響を与えることにもなります。
また、家庭内での怒りの爆発や攻撃的な言葉や態度は
親(夫婦)たちが思っている以上に10年後、20年後の子どもたちの人生に
何かしらの問題が起きるきっかけとなってしまうことも少なくはありません。
私たちの日常の生活において馴れ合いやあきらめや
見過ごしが繰り返されていく中で
知らず知らずの間に大切なことが「無関心」になり
それが「ふつう」や「日常的」な物事として変換されていってしまう…。
「無関心」は「気にしないこと」とは違い
大きな罪であることなのかもしれません。
エリ・ヴィーゼル氏の言葉から「無関心から愛は生れない」と
考えさせられた日でもありました。