五月の青春
コロナ禍から、アマゾンプライムやネットフリックスなどを利用して
映画を見る機会が増え、いつの間にかそれが習慣となり
今でも週末などに映画を探して観ることがよくあります。
いくつかの映画を視聴していくと
「あなたが興味のありそうな映画」というリストが表示されます。
確かに似ている内容や同じ俳優が出ていたりして
なんとなくその中から次の映画を選んでいることが多い気がしますが
ふと違和感を感じることがあります。
なんだか同じようなものばかり観ていて
選択肢が狭まっている感じ。
今では いわゆる「リコメンド」機能が発達して
各人の嗜好が緻密に分析され
「外れのない結果」 に誘導していくのでしょうが
「私は本当にこれを観たかったのかな」というような後味の悪さ
もしくは満足感が薄れていくような感覚でしょうか。
ライターの谷頭和希さんは、
新しく出した 「ブックオフから考える」 という著書で
通常の本屋では話題の本を表に出すなど
意図的に整然と本が並んでいるのに対して
ブックオフではあらゆるジャンルの本が
「明確な目的も脈絡もなく」半ば雑然と並んでいるため
目当ての本がなかなか見つからない一方で
思いもよらない本との出会いがある、と書いています。
この偶然性、出会い、遊びに大きな魅力があるということです。
私も商店街の中にある小さな古本屋さんで
たまたま見つけた本が今でも大切な宝物になっていたりします。
谷頭さんは他にも
「ドンキにはなぜペンギンがいるのか」という本を出していますが
ショッピングセンターのドンキホーテの迷路のような陳列で
何がどこにあるのかわからないワクワク感、
掘り出し物と出会う意外性が人に何度でも足を運ばせるのかもしれません。
旅のおもしろさも、予定を立てず無計画に
その時の思いのまま路地に入り込んでみたりする中で
偶然見つけたお店に何故か得した気分になったりすることもよくあります。
少し前に、耳の不自由な男性を主人公にしたテレビドラマが話題となり
その後似たようなドラマが他局でも出てきたなと思ったり
医者を主人公とする同じようなドラマが重なったりと
AI(人工知能)技術の進化からなのでしょうか、
いつの間にか私たちの嗜好が誰かにコントロールされてしまって
新しいものに出会うアンテナが鈍っているのかもしれません。
予期しないポテンシャルを引き出すためには、
意識して普段とは違うコトやモノにチャレンジする必要がありそうです。
ネットフリックスも、どうせなら
「あなたが興味のなさそうな映画」のリストを出してくれないかしら。
そこに本当の驚きの発見があるかも。
夫婦やカップルカウンセリングや
親子カウンセリングをしていてよく感じることですが
相手が自分とは価値観や考え方が違うことで
イライラしたり、腹が立ったり、言い争いになったりして
どうしたらうまくいくのかと相談に来る方たちも多いのですが
自分と価値観や考え方が一緒だったりすると
逆にもっと相手への理想が高くなり
相手に大きな期待をしすぎてしまうこともある気がします。
全く違う感覚で想像がつかないという未知数が高い方が
葛藤も大きいけれど、人生が豊かでおもしろいと思えたら
人は成長できるのかも知れません。
なかなかそういった考えには至らないことが当たり前ですが
私自身、わからないこと、知らないこと、
理解できないこと、共感できないことなどに
あえて、興味を持って見ていきたいと
改めて意識した日でもありました。