ビッグヒストリー
『人は真に試みているものに困難を感じる』
また、『試みようとしても「できない」そう感じるところに
方法とは呼べない道のようなものが音もなく静かに開けてくる』
これは批評家の若松英輔さんが最近エッセイで書かれていた一文です。
批評家の若松さんは、詩やエッセイを書く講座を運営しているそうですが
「書けなくなった」という声があちこちから聞こえてきたとき
その声を受け止め、心からの賛辞を送ると言います。
やっと、できないという地点に達したことを告げ
その困難に意味があることを分かち合う、と書いています。
長年続けている仕事でも、うまくいかない
満足できない、と感じることは多いと思いますが
そう感じること自体が「真に試みている」ことの証拠であって
意味のあることだと考えてみる…
これはフランスの哲学者アランの「幸福論」にもあるように
「何かが起きたら、その悪い面に焦点を当てるのではなく
良い面に焦点を当てる」というように
『幸福になる努力』を生活の第一の心がけとして
意識していくことという意味に繋がるのかもしれません。
しかし、人生という長い道のりに日々生きづらさを感じている場合
「幸福」という言葉自体、幻のように思う人も多いと思います。
つまり「幸福を感じることを試みることに困難を感じる」
という場合です。
ただそういった人達こそ
「真に生きよう」と誰よりも試みているから
感じる領域なのだと思います。
うまく生きられないと思っても
自信を失って先に進めなくなっていても
自分を好きになれなくても
そんな自分をそのままに
受け止めようとした時
「音もなく静かに開けてくる」
そんな声が聞こえてくるのだろうと
思わずにはいられなくなった日でもありました。