びわ
はるか昔、ある人の上司は
「〇〇さん、□□をやってください」ではなく、
「〇〇さん、なんで□□をやらないんですか」
という言い方をするのが口癖で
「なんで…」が聞こえてくると
いつもその人は嫌な気分になっていました。
上司としては部下のその人に対する期待も高かったのでしょうが
多分に「なんでこんなこともやってないんだ」という
苛立ちも含まれていたように思います。
「なんで…」と言われた部下が
額面通り「それはこれこれで…」と説明しだすと
上司は火に油を注がれたように怒りだし
「あなたは前にも…」などと
過去の出来事が持ち出されたりして
さらに部下は凹んでしまうという
悪循環に陥ることも日常茶飯事でした。
「なんで」という言葉はくせ者で
上司の「なんで」は説明、
すなわち言い訳を求めているのではなく
この場合はむしろ
不満や怒りを表す「間投詞」に近いと言えます。
しかし、
もし上司が部下にある仕事をさせたいのであれば
「□□をすぐやってください」と肯定型で伝え、
もし部下の行動に足りないところがあれば
具体的に説明や指導をする方が
よほど仕事は円滑に進むはずです。
子供に勉強を教える時に
「なんでこんなこともわからないんだ!」
「なんべん言ったらわかるんだ!」
などとやりだすと
子供は委縮して逆効果になってしまうのと似ています。
本当に説明を求める「なんで」ではなく、
苛立ちの「なんで」が口に出そうになったら
気を付けて、一呼吸置きましょう。
「なんで」の言葉が増えると会社などでは
それがパワハラと受け止められていったりしますので。
ただ夫婦関係などの身近な人間関係での場合は
苛立ちの「なんで…」と言われたら
説明や言い訳をする前に
相手のイライラした感情をまず受け止めて
きちんと謝る気持ちも大切なように思います。
コミュニケーションはその言葉じりだけをとらえても
わかり合えないことも多いようです。
言葉の使い方は本当に難しく悩むところですが
たしかに昔、
長嶋茂雄さんが「セコムしてますか?」
とCMで言っていましたが、
「なんでセコムしてないんですか?」
とは言わなかったですよね。