伝わるための伝え方(スタッフ)
夏休みも終わり、たいていの学校では
始業式を迎えたのではないでしょうか。
この学校が始まる時期は、
とても残念なことに、
子どもの自殺がとても多い時期です。
そんな時期だからこそ、
あえて「いじめ」について
向き合ってみたいと思います。
命が失われて初めて
いじめがあったことを思い知りますが、
日々、あちこちで、子どもも大人も、
いじめ、いじめられています。
悲しいことに
人間の本能なのだろうか、と思うほどです。
いじめがなくなることはないかもしれない。
けれど、もっと何かできることがあるのではないか、
とは思います。
いじめは、SOSでもあります。
いじめられている人だけではなくて、
いじめている人や、クラスなどの集団全体のSOSです。
“いじめはいけないこと”
そんなことは、頭では、みんなわかっています。
けれど、それでも、
誰かにいじわるをしなければいられないほどに、
いじめている人自身が
追い詰められて苦しんでいる
ということもあります。
だからっていじめをして良い理由には、
決してなりません。
許されるものでもありません。
いじめられた人は、一生ものの心の傷を負います。
身体に傷を負うこともあります。
命を失うこともあります。
大きな傷であったり、小さな傷であったり、
いつも苦しんでいたり、時々思い出す程度であったり、
人によってさまざまではありますが、
目には見えないけれど、
消えることのない傷です。
そして、楽しんでいるかのように見える
いじめている人自身も、
本当は知らず知らずのうちに
きっと心に傷を負っているのです。
今、いじめをしてしまっている人は、
いじめを辞めて、
少し深呼吸をしてみましょう。
ちょっと自分の胸に手をあてて
自分の気持ちを見てみてください。
苦しい思いやイライラやモヤモヤを素直に
誰かに話してください。
うまく話せなくてもいいのです。
いじめていても、一瞬すっとする気がしても、
苦しい思いもイライラもなくならないのでは
ないですか。
いじめを続けていても、
誰もあなたの苦しさに気が付いてはくれません。
あなたがその苦しみを手放すためには、
まず、あなた自身が苦しいということを認め、
素直に苦しいと誰かに言うことが必要です。
そしてそれを助けてくれる人が
必ずいます。
どうにもできないことであったとしても、
あなたの気持ちに寄り添ってくれる人がいます。
いじめて発散した気になっているうちは、
誰もあなたの気持ちに寄り添うことは
できません。
あなたの苦しんでいる心を
助けてあげてください。
あなたのそばにいる人たちも
本当にあなたのことを思っているわけではなくて
あなたのことが怖いのかもしれません。
どうか、あなたの苦しみを、痛みを、
誰かにぶつけるのではなく、
素直に相談してみてください。
今、いじめられている人は、
一旦逃げてください。
逃げることは恥ずかしいことではなくて、
かしこいことです。
勇気を持って学校を休んでください。
そして、誰でもいいから、
大人に話してください。
いじめられているということを話すのは、
恥ずかしいと思っているかもしれない。
けれど、決して恥ずかしいことではありません。
大人でも、誰かにセクハラやパワハラをされたら、
きちんと訴えることが必要なのです。
まだ若いあなたたちには
誰かに話すことは
とても勇気のいることだと思います。
けれど、どうか、心が限界を迎える前に、
誰かに相談してください。
わかってもらえなかったら、
他の大人に話してください。
何度でも何人でもチャレンジしてください。
そこは、あきらめないでください。
いじめられていると、自分でも気づかないうちに、
冷静な判断ができなくなってしまいます。
誰もわかってくれないように思うし、
話しても助けてくれなくて
絶望するかもしれない。
でも、助けてもらうのではなくて、
手伝ってもらって、違う道を探してください。
決して、一生いじめが続くことはありません。
環境が変われば、相手が変われば、
自分の行動が少し変われば、
きっと違う人生が待っています。
けれど、死んでしまったら、
その先には何もありません。
あなたの周りの人、
とくに家族や友達はもちろん、
あなたとはあまり話したことがないけれど
気にかけていたクラスメイトや、友達の友達、
近所の人、これから出会うはずの大事な人たち、
みんなが悲しみます。
あなたのことを思い出すたびに、
あなたとの幸せな思い出よりも
悲しみや後悔や罪悪感を思い出します。
どんなに幸せな時間があったとしても、
最後、あなたが自分で終わりにしてしまったら、
終わり悪ければ全て悪し、の人生になってしまいます。
そうしてしまいたくなっても、
そうするより前に、とにかく一旦逃げて、
相談してください。
そして心を休めてください。
今、いじめを目撃した人は、
誰か大人に話してください。
どうしたらよいのか、一緒に考えてくれる人に。
見ている人も
止めなければ加担しているのと変わりません。
けれど、直接止めるのは
とても難しく、勇気がいりますし、
怖いことだと思います。
だから、直接止めるのではなくて、
誰か、いじめている人の気持ちをくみ取れる人を探して、
話してください。
あなたの話をきちんと聞いてくれる人に。
周りにはたくさんの大人がいます。
うまく対処できない大人もたくさんいます。
それはきっと、正解のないことだからであって、
誰もがうまく対処できるわけではないと思います。
それでも、誰か、対処できる人がきっといます。
ひとりではうまく対処できなくても、
何人かが力を合わせて対処できることもあります。
どうか、失望しないで、
どうか、目をつぶって罪悪感を背負うのではなくて、
声をあげてください。
今、いじめについて相談された大人は、
一生懸命観察してください。
いじめている人、いじめられている人、
見ていて苦しんでいる人、
何か言いたげな人がいないか。
その集団は今どんな状態なのか。
いじめている人は、どんな環境で、どんな状況で、
どんなことに苦しんでいるのか。
それがわからなかったら、おずおずと聞いてみてください。
いじめには触れず、何か困っていることはないか、
苦しそうに見えるけれど何かあったのか、
耳を傾けてください。
そして、それを一緒に受け止めて、
どうしたらよいのか一緒に考えてください。
安易に「いじめをやめろ」なんて言わないでください。
そんなことは言っても意味がありません。
みんな、いじめが良くないことなのは
よくわかっています。
そして、いじめられている人の苦しさにも
耳を傾けてください。
安易に、「おまえも悪いところがあるんじゃないか」なんて
言わないでください。
「そんなこと気にするな」なんて言わないでください。
誰かにとって「そんなこと」でも
誰かにとっては死ぬほどのことなんです。
「大丈夫?」と聞かないでください。
「大丈夫?」と聞かれたら、「大丈夫」と答えてしまうから。
言葉ではなくて、顔色や、様子をよく見てください。
元気そうにしていても、笑っていても、
ふとした瞬間に、
つらそうな表情をしていませんか。
以前は友達とよく一緒に話していたのに、
気が付くと1人で過ごしていませんか。
忘れ物をよくするようになったり、
ノートや教科書や持ち物がボロボロになっていたり、
していませんか。
「大丈夫」の後ろまでよく見てほしいのです。
今、自分は関係ないと思っている人は、
よく思い返してください。
自分では大したことではないと思っていても
誰かが深く傷つくようなことをしてしまっていないか。
まわりでそんなことが起きていないか。
いじめを助長していないか。
何か、できることはないか。
みなさん、関係者を責めないでください。
責めることでは、解決も改善もしません。
ただ、追い詰めるだけです。
自分がどうサポートできるのかを考えてください。
答えは一つではなくて、
立場の数だけ、人の数だけ、あります。
答えが途中で変わってもいいのです。
一生懸命に、考えてください。
私が今まずできるのは、こうして発信すること、
こういったカウンセリングルームもあって、
お話しできる場所があるのだと知らせること、
そして、心を痛めること。
まだまだできることを模索中ですが、
いじめがなくならないとしても、
いじめによって命が失われることがなくなることを
心から祈っています。
※いじめなどに悩む子どもや保護者向けの
「24時間子供SOSダイヤル」
0120-0-78310
文:スタッフsachi
代表:椎名 あつ子