「まだ大丈夫」は大丈夫じゃない(スタッフ)
毎年、3月11日あたりの週末は
チャリティーコンサートのお手伝いをしています。
今年は、東北から足を運んでくださった方から
津波についてのお話をうかがうこともできました。
映像も見せていただいたのですが、
今まで見たことのない、リアルな映像でした。
お話してくださった方が、
あの日、自ら撮影したものでした。
その方や周りの方の声も入っていました。
「津波がくるぞ!早く逃げろ!」という声や
悲痛な叫び、
そして
「誰か(波を)止めてくれ!」という祈りの叫び。
津波は、イメージしていたものとは
全く違う姿をしていました。
ついつい、大きな波のように思ってしまっていました。
よく波打ち際で小さな波が迫ってきては
ひいていく様子を目にしたりしますが、
津波の姿は、
その小さな波がいつまでもひくことなく
延々と水かさを増やしながら
波が意志を持ってどこかを目指すように
ただまっすぐとひたすらに進んでいくような
そんな姿でした。
動くはずのない、大きなどっしりとした家が
根こそぎ流されていきました。
流された家が、隣の家にぶつかり、押し、
一緒に流されていきます。
ものの5分で、港のそばに建っていた家は
全て流され、姿を消しました。
それだけではありません。
さっきまでどこかを目指していた波が
海に帰っていきます。
今度は引き波です。
波に流された家は、あちこちにぶつかり
がれきとなり、海に飲み込まれていきました。
そんな中、多くの車が街から港へ向かっていました。
大きな地震があった後なので、
家族を心配して家に帰ろうとしていたのでしょう。
車に乗っていると、水が迫ってきていることが
見えないんだそうです。
「地震の後には津波がくる」
それを知っている人は、すぐに山や丘へ。
それを知らない人は、港のそばの家へ。
運命の分かれ道です。
家族や仲間を心配するあたたかい心からの行動が、
命を落とすことになってしまうなんて。
海沿いのその街では、
昔から数十年に一度、大きな地震とともに
津波が来ていたそうです。
それでも、今まであの日ほど大きな津波は
来た事がなかったそうです。
「今までここまで津波が来たことがないから」
そう言って家にとどまった人も
多かったそうです。
自然災害は、いつでも、
人間の想定を簡単に超えてきます。
今までなかったことも、起きる。
あの日、あの大きな地震と、
大きな津波による被害で、
私たちが思い知ったことは、
それだと思います。
あれから7年。
今も、行方不明の方がたくさんおられます。
一人でも多くの行方不明の方が
ご家族と再会できますように。
少しでも早く、
おだやかな街の日常に戻りますように。
そして、
亡くなった方のご冥福をお祈りしています。
文:スタッフsachi
代表:椎名 あつ子