「令和3(2021)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説
みなさん、こんにちは。
国語専門オンライン学習塾 啓理学舎の篠田です。
今回は、「令和5年(2023)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説をさせていただきます。
題名は「あなたに」(秋村宏)です。
【問1】
(解説)
この問題は典型的な「言いかえる」問題です。
「〜はどういうことですか」「〜はどういう意味ですか」
と問われた場合は、「言いかえる」問題と覚えておきましょう!
また、「カドがとれる」は比喩(ひゆ)表現です。
つまり、具体的表現です。
この具体的表現を抽象的表現に言いかえなさい、という問題です。
「カドがとれる」の本来の意味は、「角ばっていたものが丸くなる」です。
それが、人の性格が丸く(穏やかに、円満に)なることを比喩的に表現していると考えられます。
このあたりを解答すれば正解となります。
(解答例)解答欄:1行約20字
ひとがらや性格が、穏やかで円満になること。(21字)
【問2】
(解説)
1連1行目 ずいぶんカドがとれましたね ・・・(現在)
2連4/5行目 わたしの好きな言葉は / □だった ・・・(過去)
6連2行目 丸くなって座っているようみえても ・・・(現在)
この問題は、対比をうまく使えば解ける問題です。
現在は、「カドがとれ」、「丸くなって」います。
過去は、「□だった」です。
答えは、カドがあり、丸くなっていない状態です。
(模解)
ウ
【問3】
(解説)
線部2の前後には、下記の内容が書かれています。
3連1/2行目 夢とか希望とかを話しあう時 / 声が小さくなっていないか
3連4/5行目 怒ったり笑ったりする時 / 心が深くついていかなくなっていないか
この問題は、「くらべる力」を利用して解く問題です。
(若い頃・過去)と(現在)を対比させれば解ける問題です。
ただし、対比がそのまま詩の本文に記載されていません。
記載されていないところは、補って考えます。
ここから、
(若い頃・過去)は、
「夢とか希望とかを話しあう時」は声が大きかった。
「怒ったり笑ったりする時」は心が深くついていっていた。
と考えられます。
逆に、
(現在)は、
「夢とか希望とかを話しあう時」は声が小さい。
「怒ったり笑ったりする時」は心が深くついていっていない。
と考えられます。
ここから、答えは「オ 熱意がなくなる」となります。
(模解)
オ
【問4】
(解説)
この問題は、「言いかえる力」を使う問題です。
「カネ」と「モノ」を「あたたかさ」(4連2行目)と表現しています。
また、次の行に「ひたっていたいのだろう」と書いています。
「ひたる」とは、ある状態や心境に入り切る、ということです。
つまり、(現在)の「わたし」は、受け入れていると考えられます。
そして、「カネ」と「モノ」は誰もが欲しがるものです。
これを表現している言葉を探すと、5連2行目に「世間の誘惑」が当てはまります。
(模解)5字以内
世間の誘惑(5字)
【問5】
(問)A
(解説)
まずは、この問題の答え方ですが、「どんな存在ですか」と問われているため、「〜の存在。」と答えるのが無難でしょう。
そして、「存在」という抽象語の意味ですが、「人間や事物があること」です。
「ある」こと、そこに「いる」ことを意味します。
たとえば、
人がそこにいる。 → 人がそこに存在している。
机が部屋にある。 → 机が部屋に存在している。
イメージしやすく言うと、
「存在」は、目に見えるか見えないかに関係なく、そこに”ある”ということです。
5連2行目「『わたし』はいつも『世間の誘惑のなか』にいて」
5連3行目「『あなた』はいつも『未来や人間の豊かさ』の側にいる」と書かれています。
『 』の中が対比していることがわかります。
つまり、
「あなた」という存在は「わたし」ではなく、
また、
「世間の誘惑のなか」ではなく、「未来や人間の豊かさ」にいる存在
であることがわかります。
(解答例)1行約20字
理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在。(21字)
(問)B
(解説)
問5Aより、「あなた」は、「理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在」です。
この問題は、設問自体がわかりにくいですね。
もう少し噛み砕いて設問を言いかえると、
「あなたにじっとみられる」とは
「『現在の自分』が『理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在』にじっとみられる」となります。
さらに、「どうすることですか」も噛み砕いて言いかえると、
「どうすることですか」とは、「どのような行動することですか」と言いかえられます。
つまり、
「『あなたにじっとみられる』とはどうすることですか。」とは、
『理想的な未来や人間の豊かさの中にいる存在』が『現在の自分』に対して、どのような行動することですか、具体的に言いかえなさい、
という問題です。
2連2行目「そのわたしをじっとみているあなたに気づく」
2連3行目「そういえば」
2連4行目「わたしの好きな言葉は」
2連5行目「□(尖っている) だった」
ここから、「あなた」は「わたし」に気づきを与えていることがわかります。
また、2連4〜5行目より、「現在のわたし」は尖っていないということがわかります。
そして、5連2行目に「わたしはいつも世間の誘惑のなかにいて」と書かれているので、「わたし」が「カネ」とか「モノ」対する欲求に満ちた生活にいることに気づいたことになります。
そして、その後の
4連4行目「わたしが望んでいるのは」
4連5行目「この憤りに満ちた世界を変えることなのに」
と、以前に「わたし」が理想を追い求めてきた姿を思い出させています。
ですから、解答例は次のようになります。
(解答例)3行約60字
自分がカネやモノなどの物欲にうもれていることに気づき、憤りに満ちた世界を変えようとする気持ちを思い出すこと。(54字)
【問6】
線部5 「丸くなって座っている」とはどのような様子のたとえですか、答えなさい。
(解説)
この問題は、比喩を抽象的な言葉で言いかえる問題です。
「丸くなって座っている」とは、「現在の自分」の状態です。
では、「若い頃の自分」と「現在の自分」とを対比させると次のようになります。
ただし、詩の中に出てこない部分は推測で補っています。
「若い頃の自分」
尖っていた。(2連4〜5行目より推測)
夢とか希望とかを話しあう時 / 声が大きかった。(3連1〜2行目より推測)
怒ったり笑ったりする時 / 心が深くついていっていた。(3連4〜5行目より推測)
カネ、モノ等の物欲にひたっていなかった。(4連1〜3行目より推測)
憤りに満ちた世界を変えようとしていた。(4連4〜5行目より推測)
「現在の自分」
丸くなって座っている。(6連2行目)
夢とか希望とかを話しあう時 / 声が小さい。(3連1〜2行目より推測)
怒ったり笑ったりする時 / 心が深くついていっていない。(3連4〜5行目より推測)
カネ、モノ等の物欲にひたっている。(4連1〜3行目より推測)
憤りに満ちた世界を変えようとしていない。(4連4〜5行目より推測)
上記のことを抽象化して解答すると下記になります。
(解答例)2行40字程度
夢や希望を追い求めることや、感情豊かにいることができなくなり、現実を変えようとする意欲を失っている様子。(52字)
【まとめ】
今回の詩は、「くらべる力」を利用する問題が多かったように感じます。
しっかり頑張って、詩を得意にしましょう!



