事業承継計画を策定するフレームワーク

事業承継の重要性の認識が浸透する中、急速に存在感を高めているのが、「M&Aマッチングサイト」です。これらのサービスは、「事業を売りたい企業(売り手)」と、「事業を引き継ぎたい個人・企業(買い手)」を、インターネット上で結びつけるオンラインプラットフォームです。
M&Aマッチングサイトの仕組みの概要
M&Aマッチングサイトの基本的な仕組みは次のようになっています。
1.売り手がサイトに企業情報を登録(匿名で可能)
2.買い手が条件に合った案件を検索
3.サイト上でメッセージをやり取りし、交渉を開始
4.実名開示後、具体的な交渉や条件確認に移行
5.必要に応じて専門家(M&Aアドバイザー、士業など)を交えて最終契約へ
従来はM&Aといえば、仲介会社が個別にマッチングを行う方式が主流でしたが、マッチングサイトの登場によって、自社で簡単に案件情報を掲載し、直接相手とやり取りをすることが普及しています。こうした手軽さや費用面でのメリットが評価され、M&Aマッチングサイトは急速に普及してきました。
成長の実態:この10年で利用数は約10倍に
2014年頃には国内に数えるほどしかなかったマッチングプラットフォームですが、2024年時点では多数の主要サイトがしのぎを削る状況となっており、案件掲載数・登録ユーザー数ともに、この10年で約10倍以上に拡大したとされます。
たとえば国内最大級の「TRANBI(トランビ)」では、年間掲載案件数が1万件を超え、登録ユーザー数も20万人超を突破しました。TRANBIは2011年に創業され、当初は「ネットで会社が売れるわけがない」と言われていた時代からスタートしましたが、現在では仲介会社や士業も活用する一大プラットフォームとなっています。
一方、バトンズ(BATONZ)なども積極的なプロモーションと金融機関との連携を強め、利用者数を急増させています。2020年には政府系金融機関とも連携を開始し、地方の小規模事業者への普及が加速しました。
マッチングサイトのメリット
マッチングサイトを利用することのメリットは多数あります。
•匿名で情報公開ができるため、従業員や取引先に知られるリスクを抑えられる
•売り手は登録無料、買い手も比較的低コストで案件探しができる
•交渉の初期段階までは自分のペースで進められる
•事業規模が小さくても対象になりやすい
•一部サイトでは専門家との連携機能があり、契約締結や手続きの支援も可能
実際、かつてはM&Aの対象にならなかった、売上1,000万円〜5,000万円規模の小規模事業者や個人事業主の案件も多数掲載されるようになっており、経営者にとっての事業の「終わり方」に新しい選択肢を与えています。
専門家の新たな役割
マッチングサイトの普及とともに、我々事業承継の専門家にも新たな役割が求められています。
たとえば、サイトに登録してお相手を探すことはもちろんのこと、サイトに登録された案件に対して、契約交渉やデューデリジェンス(財務・法務調査)の支援を行うほか、サイト運営会社と提携して「専門家」としてサービスを展開するケースも増えています。
このようにマッチングサイトは単なる出会いの場ではなく、「支援者」と「当事者」をつなぐ仕組みも内包しています。
これからのM&Aにおける展望
マッチングサイトの発展は、M&Aの普及を促進しています。従来は限られた企業や富裕層しか参加できなかったM&Aの世界に、会社員、副業希望者、個人投資家といった多様なプレイヤーが参入しています。
そして、この流れは今後さらに加速していくと考えられます。特に地方やニッチ産業の後継者不足を解決する手段として、オンラインプラットフォームを活用したM&Aは今後の「当たり前」になってきています。
まとめ
M&Aマッチングサイトは、単なるITサービスではなく、「日本の中小企業の未来をつなぐ」ための社会インフラになりつつあります。小さな事業の灯を次の担い手にバトンタッチする、その第一歩として、これらのサービスを有効に活用していくことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。



