【M&Aで企業価値を高める方法】1.収益を向上する

齊藤肇

齊藤肇

テーマ:事業承継


M&Aは経営者の交代の他企業やあるいは企業グループ全体として価値を高める手段として使われます。その中で一番オーソドックスな方法は収益を向上させることです。今回はこの方法について記載します。収益拡大を実現する要素は売上拡大と費用削減になります。M&Aの方法としては買収と売却の両方があります
以下では、6つに分けてそれぞれの方法と事例を説明します。

1.売上の増加戦略

① 新たな販売手段の開拓

新たな販売手段の開拓は売上向上の大きな要素です。BtoBのビジネスを行っている企業がBtoCに進出する。逆にBtoCの企業がBtoBに進出する。店舗販売の企業がECサイトに進出する。あるいは販売促進を目的にインターネット広告に進出するなどです。製品の製造会社がそれを販売する会社を買収するなどのケースもあります。元々ブランドや商品、サービス自体で差別化できる要因があれば、成功できる可能性は高くなります。具体的な事例としては2017年の株式会社エディオンによる株式会社フォーレストの買収があります。家電量販店を展開するエディオンは、事務用品や日用品を取り扱う20年以上ECサイトを展開していたフォーレストを買収しました。エディオンはブランド力や商品の品揃えでの差別化できる要因を武器に、フォーレストの幅広い商品ラインナップや倉庫運営のノウハウを取り入れ、EC事業の拡大を実現しました。。

②他地域への店舗展開・海外進出

限られた地域でから他地域への拡大、あるいは海外市場への進出も売上増加の有力な手段です。現在の地域での市場で成長が頭打ちの場合、新たな市場を開拓することが必要です。進出する地域において商品、サービス自体で差別化する要素があれば、成功できる可能性は高くなります。具体的な事例として積水ハウスによる米国M.D.C.ホールディングスの買収があります。積水ハウスは、日本国内で培った耐震性・断熱性・省エネ性の差別化できる商品により、米国東部への事業拡大を実現し、全米規模での事業展開を強化しました。

③販売を行う箇所の拡大

販売を行う箇所の拡大することも売上拡大することが可能です。顧客にとって便利な購買手段を提供することで、競争力を高めることができます。ブランドや商品、サービス自体で差別化できる要因があれば、成功できる可能性は高くなります。具体的な事例として、株式会社ドンキホーテホールディングス(現 株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)によるユニー株式会社の完全子会社化があります。2019年、ドンキホーテはユニー株式会社の全株式を取得し、完全子会社化し、そのブランドや商品力での差別化を武器に総合スーパー事業のシナジーを創出し、売上の拡大を実現しました。

2.費用削減戦略

④業務の集約による業務効率化

同様または類似した事業を行う企業を買収することで、製造や倉庫・物流、販売、管理部門などを統合・共有することで効率化を図る方法です。不要なオフィスや設備の売却も有効になります。事業自体の考え方を大きく変えるものではなく固定費を削減できるため、投資対効果の計画は立てやすくなります。具体的な事例として日本通運によるパナソニックロジスティクスの2014年の買収があります。日本通運は、総合物流企業としてのサービス拡充と、電機業界における物流ノウハウの強化を目指していました。この買収により日本通運は電機製品の生産・販売に関する専門的な物流ノウハウを獲得し、物流業務の効率化とサービス品質の向上を実現しました。

⑤サプライチェーンの統合

自社の事業において材料の仕入れなど上流や後続の加工など、サプライチェーンを統合することで、外注することによって発生していたコスト削減や納期短縮、あるいは柔軟な製造や販売・サービス提供を行うことで競争力向上を行います。取り扱う製品自体に知見が深ければ成功する可能性は高くなります。具体的な事例としてビックカメラによる物流・設置工事を手掛けるエスケーサービスの買収があります。元々電気製品の知見を持っていたビックカメラは物流や設置工事の内製化を進め、サービス品質の向上とコスト削減を実現しました。

⑥収益性の低い事業の売却(事業削減)

上記5つがM&A買収を使った方法であるのに比べ、これは売却を使う方法になります。
企業の中に収益性の低い事業がある場合、それを売却することで、資金を有望な事業に再投資できます。特に、経営資源を高収益事業に集中させることで利益率を向上させる効果があります。具体的な事例としては武田薬品工業による2型糖尿病治療薬4製品の販売事業売却があります。武田薬品工業は、事業ポートフォリオの見直しと財務基盤の強化を図っていました。武田薬品工業は2型糖尿病治療薬4製品の日本における販売事業を帝人ファーマ株式会社に売却しました。 この売却により、武田薬品工業は財務体質の改善と、重点領域への経営資源の集中を実現しました。

M&Aを使って収益を向上させることは、買収によっては先人が行った「時間消費」「トライアンドエラー」「事業用資産獲得」「ブランドや顧客獲得」「サプライチェーンの獲得」「人的資産の獲得」「資金獲得方法の取得」などを格段の容易さで得ることができます売却によっては特効薬のような効果が期待できます。実施に当たっては綿密な事業計画の策定が必要になりますが、大きな効果が得られる可能性を持っています

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齊藤肇
専門家

齊藤肇(中小企業診断士、行政書士)

合同会社メイクイットワーク

「よいカタチで会社を譲りたい」との経営者の思いをかなえる事業承継を支援。経営を見える化し、適した手段と無理のない事業承継計画を策定。補助金申請など資金調達支援、後継者育成や相続課題にも対応しています。

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