残すのはモノではなく、想い ― 年を重ねた今だからこそ考えたい整理のかたち

弘瀨美加

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テーマ:シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納




年を重ねた方々のお宅で整理収納のお手伝いをしていると、
「今はもう、あることすら忘れていたモノ」に出会うことがあります。

それがなくても、日常生活には特に困らない。
実際、何年も使っていないことも少なくありません。
それでも、いざ処分となると手が止まってしまう――
そんな場面を、何度も見てきました。

「これは高価だったから、子どもに」
「いつか役に立つと思って」

そう話される背景には、
ご自身の人生の中で大切にしてきた時間や努力、
そして子どもへの想いが込められています。

けれど、そのモノを手にされた頃と比べると、
時代も、暮らし方も、価値観も大きく変わりました。
親にとっては思い入れのあるモノでも、
子世代にとっては「使わない」「置く場所がない」「管理できない」
結果として、残す価値のないモノ、
処分すべきモノになってしまうことがほとんどです。

その現実を目の前にすると、
少し切ない気持ちになることもあります。

けれど同時に、
モノをきっかけに語られる思い出やエピソードを聞いていると、
そこには確かに、
子どもへと手渡されている「モノではないもの」があると感じます。

それは、
愛情であり、信頼であり、
人生をどう歩んできたかという物語そのもの。

形あるものは、いつか必ずなくなります。
けれど、
そのモノから得た思い出や経験、学びは、
心の中に残り続けます。

残すのは、集めたモノではなく、
モノを通して与えてきたもの。

時代や価値観が変わることを自然な流れとして受け入れながら、
モノへの執着を少し手放し、
これまで歩んでこられた人生や、
子どもと共に過ごしたかけがえのない時間を
「目に見えない価値」として伝えていく。

それもまた、
高齢期の整理収納がもつ、大切な意味のひとつではないでしょうか。



シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納・comfy living

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弘瀨美加
専門家

弘瀨美加(講師)

comfy living

在宅介護経験者だから伝えられる実践的な整理収納スキルに強み。高齢者の心身の特性に配慮した収納のテクニックで安全で安心な住環境の整え方を提案。介護する人される人、双方の気持ちの負担も軽くなるよう努める。

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