募集図面に魂を込めろ! ――空室対策は「写真」と「図面」の見直しから始まる

相澤和久

相澤和久

テーマ:大家さん


こんにちは。行政書士の相澤和久です。
私は不動産会社に勤務しながら、行政書士として相続や不動産の相談を受けています。
そして、自分自身も区分マンションを所有する“弱小大家”のひとりです。

賃貸経営において、空室がなかなか決まらないときの“最初の見直しポイント”はどこだと思いますか?

リフォームをする?
家賃を下げる?
敷金・礼金を変更する?

どれも間違いではありませんが、意外と見落とされがちなのが「募集図面」と「写真」なんです。

今やお部屋探しの第一歩は、ポータルサイト。
その画面に出てくる「図面と写真」は、いわば物件の“名刺”です。
暗い写真、見づらい間取り図、テンプレコメントでは、お客様の心は動きません。

空室対策は、図面と写真の“伝え方”から始まる——これは、私自身の経験から確信していることです。

「空室対策=家賃を下げる」ではない

空室が続くと、「家賃を下げた方がいいのでは?」と考えるのが一般的です。
でも、実際は家賃を下げなくても決まる部屋はたくさんあります。

なぜなら、お部屋探しの9割以上はポータルサイト経由で始まり、
そこで表示されるのは「間取図」「写真」「コメント」の3点セット。

この3点で惹きつけられなければ、内見にも至らないのです。

募集図面・写真は必ずオーナーがチェックすべき理由

「それって不動産会社の仕事では?」と思う方も多いでしょう。
確かにその通りです。

しかし、以下のような状態のまま掲載されていることも少なくありません:
・リフォーム前の古い写真のまま
・汚れた室内写真が使われている
・間取図の文字が小さく読みにくい
・コメントがテンプレートのまま

こうした情報では、物件の魅力が十分に伝わらないばかりか、
「売れ残っている」「やる気がない」といった誤解を招く恐れすらあります。

だからこそ、大家自身が“最後の砦”としてチェックする習慣を持つことが大切です。

募集図面のチェックポイント【5つの視点】

ここでは、私が実際に空室対策として行っている「募集図面の見直しポイント」を5つの視点でご紹介します。
これはすべて、私自身が試行錯誤してきた経験から導き出した“実践的チェックリスト”です。

① 間取り表記は現状と合っているか?

・広さの表記(畳数など)は正確か?
1畳=1.62㎡で壁芯面積が計算されているかどうか、しっかり確認しましょう。資料が手元にない場合は、分譲時パンフレットや竣工図などを参考にして、おおよその正確な面積を把握することができます。

・WICやデスクスペースなど、強みを図面に明記しているか?
DK、洋室、トイレ、洗面所などは基本的に図面に表示されているはずですが、それ以外の空間の魅力(たとえば広めのWICや、在宅ワークに対応したデスクスペースなど)はしっかり記載されていますか?
せっかく設けた魅力的なスペースも、図面に載っていなければ「ないも同然」です。

② 設備欄は最新情報にアップデートされているか?

・フルオートバス、浄水器、3口コンロなど細かな設備まで正しく記載されているか?
住まいに求める条件は人によって違います。現地を見れば分かることであっても、図面や募集情報に明記しておくことで、選ばれる可能性が高まります。

・共用部(駐車場・駐輪場など)の空き情報は最新か?
区分マンションの場合、オートロックや宅配ボックスの有無は多くの図面で当たり前のように記載されていますが、意外と見落とされがちなのが「駐車場や駐輪場の空き状況」です。
古い情報のまま「空きなし」と掲載されていませんか?
とくに、割安な駐車場や平置き駐車場が空いている物件は、それだけで競争力があるため、必ず最新情報に更新しておきましょう。

③ コメント欄が「テンプレだけ」になっていないか?

・その物件“だけ”の個性が伝わるコメントになっているか?
「日当たり良好」「眺望が良い」「静かな住環境です」——
どれもありがちな表現ですが、これだけで「住みたい!」と思わせることは難しいでしょう。

「無垢材の床と躯体現しの天井で、アンティーク家具が映える空間です」といった、大家さん自身の“思い”や“狙い”が伝わるコメントこそが、心に刺さります。

不動産会社任せにしていると、どうしてもテンプレートのような文章になってしまいます。 だからこそ、オーナーの言葉で補っていく意識が大切です。

④ 写真の鮮度と構成は問題ないか?

・暗く、狭く、ブレた写真になっていないか?
・同じようなアングルの写真ばかりになっていないか?
こういった写真では、どんなに良い物件でも魅力は伝わりません。

さらに、空室が長引いても、不動産会社が自主的に写真を撮り直してアップデートしてくれるとは限りません。
再撮影してほしいと思ったら、自分で撮って「差し替えてください」とお願いするくらいの主体性が必要です。
今はスマホでも高画質の写真が撮れます。
構図に少し工夫を凝らすだけで、ぐっと印象の良い写真になります。

⑤ 水回り・収納・眺望の写真はしっかり載せているか?

・お客様が最も気にする場所は「隠さず見せる」が基本です。
眺望が悪いからといって、“ベランダに出て体を90度にひねって撮った”ような写真では、逆に不信感を与えてしまいます。

・浴室が古いなら、「古くても清潔に保たれている」ことが伝わるようにする
・収納は、サイズ感(奥行・幅)を写真+コメントで丁寧に補足する
見せ方を工夫するのではなく、「そのままを丁寧に見せる」という姿勢が何よりも信頼につながります。

チェック方法|ポータルサイトで自分の物件を検索しよう

SUUMO、HOME’S、アットホームなどで「物件名 or 住所 or 最寄駅」で検索して、
実際の募集画面をチェックしてみましょう。

また、周辺の競合物件と見比べることで、
自分の図面・写真の「良い点」「改善点」がよく分かります。

さらに、不動産会社に「掲載中の募集図面PDFを送ってください」とお願いして、
図面と写真の両面からチェックするのがおすすめです。

図面は「物件の顔」であり、写真は「現場の温度感」を伝えるツール。
この2つが整って初めて、“会いたくなる部屋”になるのです。

図面と写真は、大家の“意思”を伝えるツール

「どんな人に住んでほしいのか?」「何を価値として伝えたいのか?」
——図面や写真に込めた想いが、物件に“魂”を宿らせます。

テンプレで済ませる図面に、選ばれる力は宿りません。
逆に、手間をかけ、こだわって作った図面は、入居者の心に届く力を持っています。

まとめ|空室対策の第一歩は、図面と写真の「棚卸し」

・家賃を下げる前に、図面と写真を見直そう
・管理会社任せにせず、自分でも定期チェックを習慣化しよう
・図面は「物件の顔」。写真は「現場の熱量」。

空室が続くと不安になるのは当然です。
でも、その解決策は必ずしも“リフォーム”や“賃料変更”とは限りません。

「伝え方」を整えることで、物件の魅力はもっと伝わります。
その第一歩が、「募集図面に魂を込めること」だと、私は思っています。

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相澤和久
専門家

相澤和久(行政書士)

行政書士相澤和久事務所

不動産売買やファイナンシャルプランナーの豊富な知見を活用し、資産管理と遺言書作成などの相続対策から、遺言執行、不動産の売買までトータルにサポート。ライフサイクルに合わせた人生設計を後押しします

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