空室が長引いたとき、まず見に行く ―売り場を整えない人に、お客は来ない―

相澤和久

相澤和久

テーマ:大家さん


こんにちは。行政書士の相澤和久です。
私は不動産会社に勤める傍ら、兼業で行政書士をして、自分でも小さな物件を所有している“弱小大家”でもあります。

今日は、空室で募集が長引いているときに、私が一番最初にやること——
「物件を見に行く」という、ある意味あたりまえの話を、あえて丁寧に掘り下げてみたいと思います。

現地の確認、ちゃんとやっていますか?

空室がなかなか決まらない。
そんなとき、多くの大家さんが最初に考えるのは、「家賃を下げるべきか?」とか、「設備を入れ替えるべきか?」といった対価にまつわることです。

でも、私はそれより先に、まず現地を見ることを勧めます。
理由はシンプルです。売り場が整っていなければ、そもそも売れません。

夏場の空室、封水が干上がっていませんか?

季節にもよりますが、夏場の空室でよくあるのが、封水(排水トラップ)の干上がりです。
洗濯パンやトイレなどの封水が干上がってしまい、下水の臭いが室内に上がってきてしまうことがあります。
トイレのドアを開けて、「うっ」と鼻を突くような異臭を感じたら、お客様はこの部屋に入居したいと思うでしょうか?

そして、お客様はわざわざ「臭いがちょっとね…」とは言いません。
「ちょっとイメージと違って…」と言って静かに去っていくだけです。
本音は、臭いがすることから連想して、管理が行き届いていない部屋には入りたくない、ということだったりするのです。

部屋の隅に、虫の死骸が転がっていませんか?

これもありがちな話ですが、募集期間が長くなると、室内に虫が侵入して、そのまま息絶えていることがあります。
特に夏から秋にかけて、クモやハエ、小さなゴキブリなどの死骸が、部屋の隅にひっそりと転がっていることも。

賃貸募集をしている不動産会社が最低限の清掃はしてくれているかもしれません。

でも、一度でもいいから自分の目で見ておくと、「アッ、これは結構汚れているな」と気づくことがあるはずです。

空気の入れ替え、照明のチェック、臭いの確認

空室が長引いているときほど、「内見が入らないから何も整えなくていい」という気持ちになりがちです。
でも、だからこそ、ちゃんと整えておくことに意味があります。

たとえば――

  • 窓を開けて空気を入れ替えていますか?
  • 室内の照明がすべて点灯するか確認していますか?
  • 玄関に入ったときのニオイは、どんな印象ですか?
  • 建具の開け閉めは問題ないですか?

これらの基本を軽視して、写真や間取りで「いいね!」と思われても、現地での第一印象で即座に落とされてしまう。そんなケース、実はたくさんあります。

内見してみて、写真映えだけの部屋だった、というのはお客様が一番ガッカリするものです。

「内見がないから整える意味がない」は本末転倒

ここが今回、一番伝えたいポイントです。
「そもそも内見がないのだから、部屋を整える意味がない」
と思っている方がいたら、それは逆だと声を大にして伝えたい。

内見が来ないのは、整っていないことが原因かもしれないからです。

部屋をきちんと整えることで、よい写真が撮れ、募集図面に熱の入ったコメントが入れられるようになるのです。

小手先のテクニックを磨くようなことをしても、お客様は見抜いています。

清潔な売り場が、お客様を連れてくる

私は「部屋=商品」「内見=売り場」として考えています。
たとえば、八百屋の店先に並んだ野菜がしなびていたら、誰も買いたくありません。
スーパーのお惣菜コーナーで、ラップの上から中身がベチャッとしていたら、手に取る気にならないでしょう。

それと同じように、「空室の整え方」は、商品としての価値を高める最初の一歩です。
理屈じゃないんです。
人は「なんとなく感じがいい」「なんか嫌だな」で、すべてを判断するもの。

だから、空室期間中であっても、いや、だからこそ、現地は常に売る気がある状態にしておくべきなんです。

内見が入ってから整える、ではダメなんです。

掃除や空気の入れ替えは、大家さんの“気配”を届ける行為

「管理会社が見てくれているから大丈夫」
そう思いたい気持ちもわかります。

でも、実際に自分が現地に足を運んでみると、
「誰も見ていなかった場所」に自分だけが気づけることがあるんです。

私はよく、物件に入るときにこんなことを意識します。

  • 窓のサッシ、黒ずんでいないか?
  • ステンレスキッチンに手垢が残っていないか?
  • ベランダの給湯器、室外機にほこりがたまっていないか?

こうしたことを一つひとつ整えていくと、不思議なことに、次の入居者が見つかる確率が上がるんです。

それはおそらく、目に見えない何か――
「この部屋はちゃんと手入れされてるな」
という気配が伝わるからじゃないかと思っています。

まとめ:現地を整えるのは、誠意の表れ

空室が長引いているとき、私たちはすぐ「打ち手」を探そうとします。
でも、その前に一度、現地を訪れてみてください。

封水は干上がっていないか?
照明は全部点灯するか?
ニオイは大丈夫か?
虫の死骸はないか?

それらを丁寧に確認し、整えることは、お客様に対する誠意であり、経営者としての責任でもあると思っています。

お金をかけなくてもできることは、たくさんある。
その最たるものが、「現地を見に行くこと」なのです。

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相澤和久
専門家

相澤和久(行政書士)

行政書士相澤和久事務所

不動産売買やファイナンシャルプランナーの豊富な知見を活用し、資産管理と遺言書作成などの相続対策から、遺言執行、不動産の売買までトータルにサポート。ライフサイクルに合わせた人生設計を後押しします

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