相続トラブルだけじゃない。「遺言」を残す、本当の意味

相澤和久

相澤和久

テーマ:相続


こんにちは!行政書士の相澤和久です。


「遺言を作っておいた方がいいですよ」と言われたとき、あなたならどう思うでしょうか。

「うちはそんなに財産ないし、大丈夫」
「家族仲は良いから揉める心配なんてないよ」
「そもそも遺言なんて大げさだよね」

そう感じる方も多いのではないでしょうか。

遺言というと、遺産分割=お金の話と思われがちです。
確かに、財産をどう分けるかを明記しておけば、「争続(そうぞく)」と呼ばれる相続トラブルの予防になります。
でも、私はそれだけでは足りないと感じています。

遺言がもたらすのは、遺族の“心の負担”を軽くすること。
だからこそ、「うちは大丈夫」と思っている方にこそ、遺言を書いてほしいのです。

「遺言がないと、相続手続きが大変」って知っていますか?

たとえば、預金口座の名義人が亡くなった場合。
遺言がなければ、相続人全員の印鑑証明書と戸籍一式を用意して、「この人たち全員で話し合って決めました」という証明を金融機関に提出しなければなりません。

なかには、遠方に住んでいたり、疎遠になっていたりする相続人もいるかもしれません。
ただでさえ大切な人を亡くしたばかりの中で、あちこちに連絡を取り、書類を集め、役所をまわるのは、相当な負担です。

ところが、遺言があれば、その指定を受けた人がひとりで手続きを進めることができます。
必要なのは、本人確認書類と印鑑証明書くらい。
これはほんの一例ですが、遺言があるかないかで、手続きの手間は大きく変わってくるのです。

【実例】家族が仲良しでも、想定外は起こる

あるご家族のお話をご紹介します。
80代のご両親と、既に独立している60代・50代の兄妹。
親子関係はとても良好で、「お父さんが亡くなったら、お母さんがすべて相続する」という認識で、全員が納得していました。

ところが実際にお父さんが亡くなったとき、お母さんの認知症が進行しており、遺産分割の内容を理解できる状態ではありませんでした。
自筆で署名することも難しく、家庭裁判所で「後見人」を選任しないと、相続の手続きを進められないことに。

ここで「全財産を妻に相続させる」と一文でも遺言に書かれていれば、まったく違う展開になっていたはずです。

家族仲が良くても、避けられないのが老いと認知症。
このケースのように、想定していなかった“壁”にぶつかるご家族を、私は何組も見てきました。

費用は?手間は?――遺言はもっと身近にできる

「確かに必要かもしれないけれど、遺言ってお金かかるんじゃない?」
そんな声もよく聞きます。

もちろん、公証役場で作る「公正証書遺言」は確実性が高いぶん、10万円前後の費用がかかります。
ですが、いまは もっと手軽に・安く・安全に遺言を残す方法 もあります。

たとえば、自筆で書いた遺言を 法務局に保管 してもらう制度があります。
保管料はわずか3,900円。
しかも、裁判所の「検認」手続きが不要になり、相続人への通知も可能。
大切な遺言書が誰にも見つけてもらえず、ただの紙切れになってしまう心配もありません。

市販の例文集などを参考にしながら、自分で作成することもできます。
もちろん、不安な方は行政書士などの専門家に見てもらうのも安心です。

遺言は、“財産のため”ではなく、“人のため”

人が亡くなったとき、残された方がすぐに直面するのは「感情の整理」だけでなく、「現実の手続き」です。
役所、銀行、不動産、保険…。淡々と進めなければならないことばかり。

そんなとき、「あの人は、ここまで準備してくれていたんだ」とわかるだけで、遺された家族の気持ちはどれほど救われるでしょうか。

財産の多い少ないにかかわらず、**遺言は“やさしさの形”**として、誰にでも意味があります。

自分が旅立ったあとも、大切な人たちが安心して日々を送れるように。

遺言は、その願いを形にする手段です。

もし、「何から始めたらいいかわからない」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
一緒にひとつずつ、整理していきましょう。
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