管理費・修繕積立金の使い道を確認する方法|管理規約の重要性

相澤和久

相澤和久

テーマ:不動産

マンションを購入すると、毎月必ず管理費・修繕積立金を支払う必要があります。
これらの金額はマンションの規模や部屋の広さによって異なり、住宅ローンとは別に発生するため、家計への影響も無視できません。
特に、住宅ローンを完済した後も管理費の支払いが続く点を考慮すると、老後の生活設計にも関わる重要なコストです。

「管理費・修繕積立金がかかるなら、戸建ての方が割安では?」と考える方もいるでしょう。
特に、車を所有している方は駐車場の費用も含めたトータルコストを考慮する必要があります。
実際に、管理費等を単なるコストと捉えがちですが、実際にそのお金がどのように使われているのかをご存じでしょうか?

本記事では、管理費・修繕積立金の使い道を詳しく解説し、お得なマンションを見極めるためのポイントを紹介します。

管理費の使い道を知る重要性

「管理費=管理会社に支払うお金」という認識は半分正解で半分間違いです。
マンションの運営ルールは「管理規約」によって定められており、その内容はマンションごとに異なります。
国土交通省が推奨する「マンション標準管理規約」を基に作成されることが多いですが、特に築年数の古いマンションでは独自の規約を持つケースもあります。

一般的な管理費の主な使途は以下の通りです:

  1. 管理員人件費
  2. 公租公課
  3. 共用設備の保守維持費及び運転費
  4. 備品費、通信費、その他の事務費
  5. 共用部分等に係る火災保険・地震保険、その他の損害保険料
  6. 経常的な補修費
  7. 清掃費、消毒費及びゴミ処理費
  8. 委託業務費
  9. 専門的知識を有する者の活用に要する費用
  10. 管理組合の運営に要する費用

管理会社に支払うお金で賄われているのは、1.3.7.8.です。
それ以外の費用は管理会社に支払っているものではありません。

マンションの規模や設備、年度によって異なりますが、火災保険料、水道光熱費、補修費はその年の管理費全体の支出の20-30%になることもあります。

管理費が高い=管理会社の委託費が高い、という単純なものではありません。

管理費の使途の内訳を知ることで、そのマンションのポリシーがわかるといってもいいでしょう。

例えば、管理会社に全てを委託するのではなく、管理人さんだけは組合で直接雇用しているマンションもあります。

管理人さんがコロコロ変わるより、気心の知れた人が長期間携わっていることが住人にとっては大きな安心感につながっていると思われます。

また、エレベーターの保守管理会社と直接契約をすることでメンテナンス費用を削減したり、定期的な植栽メンテナンス頻度を調整することによる費用削減に取り組んでいるなど、細かく見ると努力をしている管理組合かどうか判断できます。

努力をしている管理組合というのは住人のマンション運営に対する意識が高く、長期的なビジョンを持っていることが多いと感じます。

終の棲家としてマンション購入を考えるのであれば、管理費の使途を確認してみることをおすすめします。

修繕積立金の役割と長期修繕計画の確認

修繕積立金は、マンション全体の大規模修繕工事のために積み立てるお金です。
ただし、管理費の中にも修繕費が含まれているため、それぞれの役割を理解することが大切です。

  • 管理費から出る修繕費:日常的な軽微な補修(例:共用部分の照明交換など)
  • 修繕積立金から出る修繕費:長期的な計画に基づく大規模修繕(例:外壁塗装や屋上防水工事など)

国土交通省のガイドラインによると、大規模修繕工事とは「資産価値を維持するための修繕工事や、必要に応じた建物の性能向上を目的とする改修工事」を指します。

では、具体的にどのような修繕工事が予定されているのか、費用はどのくらいかかるのか? その答えは「長期修繕計画書」に記載されています。

長期修繕計画とは?

長期修繕計画は、将来の大規模修繕工事に向けて、必要な費用を計算し、毎月の修繕積立金を適切に設定するためのものです。
計画の作成には国交省のガイドラインがあり、適切に作成されていれば安心材料になります。
ただし、マンションごとに想定される修繕内容や周期、工事単価が異なるため、収支がプラスだからといって100%安心とは言えません。

特に、以下の点を確認することが重要です。

  • 想定修繕工事の内容:排水管交換や耐震補強工事が含まれているか?
  • 計画の更新時期:最新の長期修繕計画はいつ作成されたものか?(5年ごとに見直されているか?)
  • 修繕積立金の収支状況:将来的に値上げや一時徴収の可能性はあるか?

長期修繕計画が作成されていない場合や最新のものが古い場合、「マンションライフサイクルシミュレーション(長期修繕ナビ)」を活用することで、修繕積立金の過不足をシミュレーションできます。

興味のある方はぜひ確認してみてください。
マンションライフサイクルシミュレーション(長期修繕ナビ)

まとめ|管理費と修繕積立金を理解することが大切

  • 管理費=管理会社への委託費とは限らない
  • 管理費の内訳を確認することで、マンションの管理方針がわかる
  • 修繕積立金は、将来の大規模修繕工事のための貯蓄
  • 長期修繕計画をチェックすることで、将来の工事計画を把握できる
  • 計画が古いマンションでは、修繕積立金の不足リスクを検討する必要がある

単に、管理費が高い・安い、という視点ではなく、もう一歩踏み込んで読み込んでみると気づきがあって面白いと思います。

また、修繕積立金は家計における長期の貯蓄計画に似ています。

とにかくお金を貯める、ということではなく、何のために・いつまでに・いくら必要なのかを明らかにして、その目標に向けて定期的に貯蓄を進めることになります。

もしお金が足りないと言うことが分かったら、支出を減らすか借り入れをするか、というのも修繕積立金と家計管理では共通です。

修繕積立金が不足するからこのマンションは検討できない、というのはちょっともったいない気がします。

将来の積み立て不足にどのように対応するのか想像して、積立金の値上がり幅を織り込んだうえで購入の判断をすれば良いのではないでしょうか。

とはいえ、初めてマンションを購入する方がシミュレーションをして判断することは難しいかもしれません。

数多くの中古マンションをみてきた知見を活かしたアドバイスをしておりますので、修繕積立金が気になるマンションがあった際にはぜひご相談ください。

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相澤和久
専門家

相澤和久(行政書士)

行政書士相澤和久事務所

不動産売買やファイナンシャルプランナーの豊富な知見を活用し、資産管理と遺言書作成などの相続対策から、遺言執行、不動産の売買までトータルにサポート。ライフサイクルに合わせた人生設計を後押しします

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