手付金と諸費用と頭金と自己資金、そして借入金額…正しい言葉の定義とは

相澤和久

相澤和久

テーマ:不動産

同じ仕事を長くしていると、当たり前に使っている言葉が相手に正しく伝わっていないことに気づかなくなってしまいます。

それは不動産購入において致命的な誤解を生むこともあります。特に資金計画においては注意が必要です。

先日、「頭金と手付金は違うんですか?」という質問を受けました。

手付金とは?

手付金とは、売買代金の一部を契約時に支払う証拠金のようなものです。
これは、売主・買主の間で取り決めるもので、一般的には売買代金の5〜10%程度とされています。

例えば、売買代金が5,000万円の場合、手付金として500万円を契約時に支払い、残りの4,500万円は引き渡し時に支払うのが一般的な流れです。

手付金は契約の履行を担保する役割も持ち、買主が契約を解除する場合は手付金を放棄し、売主が解除する場合は手付金の倍額を返還するという「手付解除」の仕組みもあります

頭金とは?

一方で、頭金という言葉は、不動産取引そのものではなく、住宅ローンの文脈で使われます。
頭金とは、「借入金とセットで考える、自分で準備する資金」のことです。

たとえば、「頭金として1,000万円準備するから、残りは借入金で対応する」という具合に使います。

つまり、手付金=頭金ではありません。

先ほどの例で整理すると、

  • 売買代金:5,000万円
  • 手付金:500万円
  • 頭金:1,000万円
  • 借入金:4,000万円

この場合、契約時に500万円を支払い、引き渡し時には借入金4,000万円+自己資金500万円の合計4,500万円を支払うことになります。

自己資金とは?

ここで「自己資金」という言葉が出てきました。
自己資金とは、「借入に頼らず、自分で準備するお金」のことです。

  • 手付金500万円 → 自己資金
  • 引き渡し時の自己負担500万円 → 自己資金
  • 合計1,000万円の自己資金

この例では、頭金(1,000万円)と自己資金(1,000万円)が一致しましたが、頭金=自己資金ではありません。

(少し複雑になってきましたね…)

頭金0円のケース

売買代金5,000万円、手付金500万円、借入金5,000万円(フルローン)というケースも考えてみましょう。

最近では、売買代金の全額を住宅ローンで借りるケースも珍しくありません。

この場合、契約時に手付金500万円を支払います。
引き渡し時には、残りの4,500万円を支払いますが、ローンで5,000万円全額を借りるため、手元に500万円が戻ってきます。

つまり、契約時に一時的に出した500万円が、引き渡し時に戻ってくる形になります。

この場合、頭金は0円(売買代金=借入金)ですが、契約時に手付金500万円を支払うため、自己資金として500万円が必要になります。

ここでも、「頭金=自己資金ではない」ことがわかります。

諸費用も忘れずに

不動産購入では、売買代金以外に諸費用(登記費用、仲介手数料、税金など)も発生します。
一般的に諸費用は物件価格の7〜10%程度かかるとされており、例えば5,000万円の物件を購入する場合、350〜500万円程度の諸費用が必要になります。

この諸費用は住宅ローンに組み込めない場合が多いため、自己資金として準備しておく必要があります。
(ここでも自己資金という言葉が出てきます。)

伝える側の責任

ここまで言葉の定義を整理してきましたが、結局のところ、大切なのは「今使っている言葉の意味が正しくお客様に伝わっているのか?」ということです。

例えば、私が「頭金はいくら準備できそうですか?」と聞いたとき、お客様がそれを「自己資金」と勘違いすると、資金計画が大きく狂います。

そして、最悪の場合は契約後に「資金が足りない!」という事態にもなりかねません。

また、手付金を「頭金」だと思っていると、売買契約時に必要な自己資金を準備していなくて困ることもあります。

不動産購入は、多くの人にとって人生で一度あるかないかの大きな買い物です。
そのため、専門家としてお客様が混乱しないように、できるだけわかりやすく説明する責任があると考えています。

そんなトラブルを防ぐためにも、相手の理解を確認しながら言葉を使うことが大切だと改めて感じています。

このコラムは、そんな自戒の意味も込めて書きました。

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相澤和久
専門家

相澤和久(行政書士)

行政書士相澤和久事務所

不動産売買やファイナンシャルプランナーの豊富な知見を活用し、資産管理と遺言書作成などの相続対策から、遺言執行、不動産の売買までトータルにサポート。ライフサイクルに合わせた人生設計を後押しします

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