地震保険の建築年割引における「建築年月日」の不思議とは?

相澤和久

相澤和久

テーマ:保険


中古住宅を購入する際、多くの人が火災保険に加入します。
住宅ローンを利用する場合は、金融機関から火災保険の提案を受けたり、不動産会社からプランを紹介されたりすることが一般的です。

そして、火災保険には地震保険をセットで加入するケースが多く、契約時に割引制度について説明を受けることがあります。

地震保険には、建物の耐震性能に応じた割引制度が複数用意されています。
例えば、

  • 免震建築物 → 50%割引
  • 耐震等級3級 → 50%割引
  • 耐震等級2級 → 30%割引
  • 耐震等級1級 → 10%割引
  • 建築年割引・耐震診断割引 → 10%割引

この中でも「建築年割引」は比較的取得しやすく、最も利用者が多い割引制度ではないでしょうか。

では、建築年割引を受けるための条件とは何でしょうか?

地震保険の建築年割引とは?

建築年割引を受けるための条件は、「1981年(昭和56年)6月1日以降に新築された建物であること」です。
この日付は、不動産関連の税制でもよく目にするいわゆる「新耐震基準」が施行された日です。

新耐震基準とは?

新耐震基準かどうかは、「昭和56年6月1日以降に建築確認を受けたかどうか」で判断されます。

建築確認とは、建物を建てる前に「どんな建物を建てるのか?」を役所に申請し、審査を受ける手続きのことです。

つまり、

  • 昭和56年6月1日以降の建築確認 → 新耐震基準に適合(割引対象)
  • 昭和56年5月31日以前の建築確認 → 旧耐震基準(割引対象外)

ということになります。

新耐震基準の建物は旧耐震基準よりも安全性が高いため、地震保険の保険料が割引される仕組みです。

建築年割引を受けるために必要な証明書類

建築年割引を受けるためには、建築年を証明する書類を提出する必要があります。
具体的には、以下の書類が対象です。

  • 建築確認書(確認済証・確認通知書)
  • 検査済証
  • 建物登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 宅地建物取引業法に基づく重要事項説明書

このうち 「昭和56年6月1日以降の建築」であることを確認できれば、建築年割引が適用されます。
しかし、ここでちょっとした“矛盾”が生じることがあります。

証明書類の日付は同じでも意味が違う?

地震保険の建築年割引は、新耐震基準に適合する建物に対して適用されるはずです。

ところが、実際には 旧耐震の建物でも割引を受けられるケースがあるのです。

例えば、建物登記簿謄本(全部事項証明書) に記載されている 「建築年月日」は、建築確認の日から 半年~1年後になっていることが多いです。

つまり、

  • 登記簿に「昭和56年6月1日以降」と記載されていても、実際の建築確認はそれ以前だったというケースがあり得るのです。

厳密に考えれば、新耐震基準の適用可否を判断するためには、建築確認書(確認済証・確認通知書)や検査済証でチェックすべきでしょう。

しかし、これらの書類を個人で保管している人は少ないため、簡便な取り扱いをするために建物登記簿謄本や重要事項説明書も証明書類として認めているのが現状です。

住宅ローン控除でも同じような「緩和措置」が!

実は、似たような取り扱いの変更が住宅ローン控除でも行われています。
令和4年(2022年)から、住宅ローン控除の適用要件が緩和されました。
それまでの住宅ローン控除では、

  • 「新耐震基準の建物か?」 → 建築確認・検査済証で証明が必要

というルールでした。
しかし、令和4年以降は、登記簿謄本に「昭和57年1月1日以降の新築年月日」が記載されていれば適用OKとなりました。

これにより、「実は旧耐震の建物でも住宅ローン控除が受けられる」というケースが出てきたのです。
この変更により、住宅ローン控除の要件が大幅に緩和されたといえます。

まとめ:中古住宅を購入するなら、この変更を知っておこう!

地震保険の建築年割引

  • 新耐震基準(昭和56年6月1日以降の建築確認)なら10%割引
  • ただし、登記簿謄本の日付で割引適用できるため、実際は旧耐震でも受けられる可能性がある

住宅ローン控除の適用要件(令和4年改正)

  • 昭和57年1月1日以降の新築年月日が登記簿に記載されていれば適用OK
  • 実際は旧耐震の建物でも控除を受けられるケースがある

これから中古住宅を購入する人へ

中古住宅を購入する際は、「どの証明書類を基準に適用可否が決まるのか?」をしっかり理解しておくことが大切です。

知らないと損する制度変更もあるので、最新情報をチェックしながら有利な条件で住宅購入を進めましょう!

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相澤和久
専門家

相澤和久(行政書士)

行政書士相澤和久事務所

不動産売買やファイナンシャルプランナーの豊富な知見を活用し、資産管理と遺言書作成などの相続対策から、遺言執行、不動産の売買までトータルにサポート。ライフサイクルに合わせた人生設計を後押しします

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