自分らしく暮らしを楽しむ1台をかなえるため、車いすをオーダーメード（2/3）

知識と技術を身に付けて独立。現状だけでなく近い将来も見据えて車いすを提案

　かねてより、ものづくりに携わりたいと考えていた工藤さんですが、新卒で就職した建設資材卸売会社では営業職に就きます。仕事は充実していたものの憧れは消えず、20代半ばで飛び込んだのが現職です。

　研修後は、自動車を手元で操作する運転補助装置を取り付ける業務に従事。車いすに触れるようになると、デザインや機能の多様性に驚いたと言います。
　
　「同僚からバスケット用の修理担当を引き継ぎ、地域のスポーツ関係者とお話しするようになると、ますます奥深さにハマりましたね。前にうまくいったやり方が、またうまくいくとは限らない。一筋縄でいかない難しさは魅力でもあります」

　ユーザーの一人一人と定期的に会い、動作などの変化を見ながら細やかに調整を重ねてきた工藤さん。「メーカーの方からも業界の新情報や実践に生きる知識をいただいて。皆さんに教えを受けながら経験知を積んできました」と振り返ります。

　約15年の勤務の中で得たノウハウをもとに、2022年に独立。現在は月に3～5台の新車を製作するとともに、メンテナンスもこなします。

　「お客さまの年齢や性別、体格、体の状態を考慮して、現状の利便性を高めるのはもとより、今後のことを見据えたご提案を心掛けています。車いすの耐用年数は約6年。買い替えの場合は6年分のお悩みやご要望があるわけで、その点をまずじっくりとヒアリングしています。車いすが初めての方には、お仕事や趣味なども伺い、その方の日常にフィットするモデルを考えます」

＜次ページへ続く＞

【次ページ】「車いすってかっこいい」から、福祉の捉え方をポジティブな方向へ

次のページへ