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インビザラインの「〇〇プロバイダー」って本当に信頼の証?

北條智之

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テーマ:マウスピース矯正 北上

― 安心・安全なマウスピース矯正のために知っておきたいこと ―


はじめに


近年、目立ちにくく快適な装置として人気を集めているマウスピース矯正。
その中でも「インビザライン」は特に知名度が高く、多くの歯科医院で導入されています。
医院のホームページや広告で「当院はプラチナプロバイダーです」「年間○○症例の実績!」という表示を目にすると、「たくさん治療している=安心できる」と感じる方も多いでしょう。
しかし、その“プロバイダー称号”本当に治療の質を保証するものかどうかは、慎重に見極める必要があります。
今回は、インビザラインのプロバイダー制度の仕組みと、見逃してはいけない注意点について、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。

インビザラインの「〇〇プロバイダー」って何?


症例数で決まる“ランク制度”

インビザラインを提供するインビザライン・ジャパンでは、アドバンテージプログラムという制度があります。
これは、過去12か月間に医院が取り扱ったインビザライン治療の件数(=症例数)に応じて、「プラチナ」や「ダイヤモンド」などの称号が付与される制度です。
このランクが上がると、医院はインビザライン社からの割引やマーケティング支援などの特典を受けられる仕組みになっています。

ランク=治療の質ではない

注意していただきたいのは、この称号は「件数」によってのみ決まるという点です。
つまり、ランクが高いからといって必ずしも難しい症例に対応できる技術がある、丁寧な診療が行われている、ということを保証するものではありません

ランク制度のリスクとは?

便利で合理的に見えるこの制度ですが、現場では以下のようなリスクも指摘されています。

  • 適応外の症例に使われる可能性

症例数を増やすことが医院にとってメリットになるため、本来インビザラインが適していない患者さんにも無理に提案してしまう可能性があります。
その結果、思ったように歯が動かない、治療が長引く、追加費用がかかる…といったトラブルが起こることも

  • 診断・治療計画の質が下がる恐れ

多くの症例をこなすことを重視するあまり、初診カウンセリングや診断が十分に行われないケースもあります。
「とりあえず始めて、問題が出たらその都度対応する」という流れになってしまうと、結果的に患者さんの満足度が下がってしまうこともあります。

  • 営業的な判断が優先されるリスク

医院側にとって利益率の高い治療が優先される傾向があるため、本来はワイヤー矯正が向いている症例でも、インビザラインが選ばれることがあります。


インビザライン社の見解と現場の実情


本来は広告使用NG

インビザライン・ジャパンはこのアドバンテージプログラムについて、以下のように公式に説明しています。

「これは過去12カ月間の症例数に応じたディスカウントプログラムです。医師本人の宣伝や医院の広告には使わないよう、繰り返し注意喚起しています。」



しかし、実際には「〇〇プロバイダー」といった称号を用いて、医院の安心・実績をアピールする表現が多く見受けられます。

経験者が語る“現場のリアル”

過去に日本で年間インビザライン症例数1位を獲得した経験のある歯科医師が、ある誌面でこう語っています。

「今の診療体制では、年間1000症例なんて現実的ではない。症例数だけを過度にアピールしていた自分が、今では恥ずかしいと思う。」


数だけを追いかけることの限界を、当事者として実感しているのです。

数字より大切な「適切な治療選択」

当院の方針と実際の症例数

矯正治療が普及している北米圏においては、AAO(※1)による調査を参照すると、アメリカ・カナダにおけるブラケット装置を含めたすべての矯正治療患者数は1施設あたり500~600人(※2)だといいます。マウスピース矯正症例はこの数字より少ないと見積もられます。
当院でのインビザライン症例は、累計約100件。これは全体の矯正患者の4分の1~5分の1程度です。
患者さんごとに最適な治療方法を提案するため、インビザライン以外の選択肢(ワイヤー矯正・TAD・床矯正など)も積極的に検討しています。

※1 American Association of Orthodontists(AAO):2年以上の矯正歯科研修プログラムを修了したもののみが加入する北米圏学術団体。
※2 AAO Economics of Orthodontics Survey Report: Patient Data Similar to Pre-COVID Reports; Growth in DSO/OSO Employment(Sep.13.2023)より引用



アライナーは万能ではない

マウスピース矯正は、矯正装置の中の“ひとつの選択肢”でしかありません。
すべてのケースで最適というわけではなく、症例に応じて使い分けることが重要です。
また、マウスピース矯正は「医薬品副作用被害救済制度」の対象外であり、何らかの問題が起きた際に補償が受けにくいことも、知っておくべき情報です。

まとめ:プロバイダー称号は「判断材料の一つ」にすぎません

「〇〇プロバイダー」の表記を見たとき、確かに安心感があるかもしれません。
ですが、それは医院の選び方として“参考のひとつ”であり、すべてを決める基準ではありません。
大切なのは、どの矯正方法が自分に合っているか、そして医師がしっかりと時間をかけて診断・説明してくれるかどうかです。
安心できる矯正治療のために、正しい情報をもとに、納得できる選択をしましょう。

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北條智之
専門家

北條智之(歯科医師)

北上インプラントデンタルオフィス

インプラント歯科学の権威、ウルリッヒ・ヨース博士の治療法を専門的に学んだ知識と3DCTなど先進設備で、グローバル・スタンダードな治療を心掛けています。

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