マウスピース矯正を成功に導く3つの取り組み
はじめに
マウスピース矯正の良いところは、装置が目立たず、快適に使え、食事や歯みがきの時には取り外せる点です。そのため、目立たずに歯並びを治したい人に人気があり、最近ではマウスピース矯正を大きくアピールする広告をよく目にするようになりました。
確かにマウスピース矯正は優れた治療方法ですが、抜歯が必要になるような歯並びの大きな乱れには向いていません。ここでは、マウスピース矯正に向かないケースについて、専門的な論文をもとに説明します。
マウスピース矯正が向かないケース
マウスピース矯正はすべての人に適しているわけではなく、限界もあります [1,2,3,4]。
特に、抜歯が必要なほど歯が重なっていたり、すき間が大きかったりする場合には、マウスピース矯正は適していません。また、前歯の一部が噛み合わない（前歯交叉咬合）といった問題には対応できる場合もありますが、噛み合わせの状態によっては、十分な効果が得られないこともあります。
さらに、顎の大きさや位置に問題があるケースや、歯を大きく動かす必要がある場合も、マウスピース矯正ではうまくいかないことがあります [4,5,6,7,8]。また、歯周病が進行している場合や、虫歯や歯ぐきの病気がコントロールできていない場合も、マウスピース矯正はできないことがあります [9,10,11]。
マウスピース矯正は、見た目が良くて違和感が少ない反面、治療に時間がかかることもあります。透明なマウスピースは少しずつ歯を動かすため、固定式の矯正器具に比べて変化がゆっくりだからです。
さらに、成功するためには患者さん自身がしっかり協力することがとても重要です。マウスピースは1日22～23時間つけ続け、1～2週間ごとに新しいものに交換しないといけません。きちんと装着しないと、治療が長引いたり、期待する結果が得られなかったりします。
また、歯並びの問題が複雑な場合、マウスピースだけでは対応しきれないことがあります。このようなときは、従来の固定式の矯正器具や、場合によっては手術が必要になることもあります。さらに、歯並びの問題が、顎関節のトラブルなど他の原因による場合、マウスピース矯正だけでは噛み合わせが治らないこともあります。
マウスピース矯正は、従来の矯正方法より費用が高くなることもあります。特に、複雑なケースでは複数セットのマウスピースが必要になるため、治療費がかさむことがあります。また、子どもの患者さんの場合、マウスピース矯正では十分な効果が得られないこともあります [12]。その場合は、従来の矯正装置の方が良い選択肢になるでしょう [13,14]。
マウスピース矯正はまだ新しい技術なので、これから材料や治療方法がさらに進化していくと考えられます。主だった歯並びの問題をまず従来のブラケット矯正で改善し、その後にマウスピース矯正に切り替える、という使い方が現実的です [15]。
まとめ
2025年現在、マウスピース矯正の世界での症例数は公式統計こそないものの、累計で約2000万例、市場規模は約6700億円に達すると予想されています。この背景には、「マウスピース矯正でほとんど対応できます。負担も少なく、快適で、安全です。」とメーカーと歯科医師の双方がミスリードしている可能性があります。
マウスピース矯正と従来の固定式矯正（ブラケット矯正）のどちらを選ぶかは、患者さん自身の歯並びの状態や希望、なにより担当の矯正歯科医の歯科医学的見地をもとに決める必要があります。
マウスピース矯正は、快適で目立たない治療を希望する方には魅力的ですが、複雑な歯並びやしっかりした効果を求める方には、従来の矯正の方が向いていることもあります。
マウスピース矯正は、数ある矯正治療方法のひとつにすぎません。従来の矯正装置と組み合わせて使うことがより良い結果につながるでしょう。
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