インプラント治療後の情報の控え
骨を人工骨で賦形し、補填することで痩せている顎の骨を足しインプラント治療を行うための下地を作ることが可能です。これを骨造成術といいます。しかしながら、以下に記載します禁忌症、代替療法、骨造成術のリスクについては確認が必要です。
骨造成術の禁忌症
前提として、インプラント治療を希望される場合、全身疾患の管理を受けているかどうかを確認します。とくに、骨粗鬆症の内服治療を受けている、放射線治療を受けている、血液抗凝固薬の内服を受けている、など上記の既往歴がある方は歯科医師にお伝えください。
通常、顎の骨が痩せていてインプラント治療がより困難になるのは上顎です。上顎は、顎の骨の上側に鼻腔、副鼻腔といった空洞があるためにそもそも下の顎に比較して薄く、小さいのです。
骨が著しく痩せてしまった上顎に対し、仮にインプラント治療を希望される場合当院では骨造成術を検討します。つまり、顎の骨を足す治療を行います。顎の骨を十分に足すことが出来た場合、インプラント埋入術を実施します。
骨造成術の代替療法
上顎に骨が十分にない方へ、骨造成を伴わずインプラント治療を行う術式があります。頬骨インプラント(ザイゴマインプラント)と呼ばれる方法です。通常、4本の長いインプラントを口腔内から上顎洞(副鼻腔の一部)を経由して頬骨の一部にアクセスします。頬骨インプラントであれば、骨造成術を回避しながらインプラント治療を行うことができます。
ただし、頬骨インプラントには
・一過性の眼窩下神経感覚異常
・頬骨の骨折
・眼窩腔貫通
・上顎洞炎
など特有の合併症が報告されています。なお、当院では頬骨インプラントは実施しておりません。
骨造成術のリスク
骨造成術の場合、治療期間は長期化することが一般的です。長期化することが当院における最大のリスクです。最低でも6カ月、最大で24カ月程度におよんでおり骨造成術だけで相当な期間を要しております。また、骨造成そのものが良好な結果を生まない合併症が存在します。代表的な合併症は術後感染症です。しかしながら、骨造成術のデメリットや合併症は通常、術部に限定的です。
当院の方針
当院では骨造成術そのものも大規模かつ広範囲におよぶ場合インプラント治療を回避した治療計画を考えます。インプラント治療は費用対効果を考慮の上、インプラント治療を回避したほうが最適である場合それ以外の治療法を選択します。
インプラント治療は仮に骨造成術を伴わないとしても相応の期間、術後のトラブルに警戒しなければなりません。当院ではインプラント埋入手術前にできることを最大限行います。具体的には、「インプラント埋入に耐えうるようにする。咬むことができるようにする」ことです。
口腔インプラントは「かみ合わせを支える従属装置」に過ぎません。インプラント治療そのものの最大の目的は「咬めるようになる」ことに他なりません。インプラント治療の目的にそって治療計画をたてれば自ずとかみ合わせを改善することがインプラント手術よりも優先すべき治療ステップになっていきます。かみ合わせの改善はインプラント治療を構成する大切なステップです。口腔インプラントはかみ合わせをそれだけで改善したり、1本や2本のインプラントがあればいいという医療機器では決してありません。
正しい位置に、正しい時期に行うことで患者さんの利益を最大化することができるのです。その上で、骨造成が必要なのか否かやインプラント埋入計画はどうなるのかが具体化されるのです。