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「事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド」(2)について

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こんにちは。弁理士の福島です。

特許庁で公開されている「事例から学ぶ 意匠制度活用ガイド」(2)について、お話したいと思います。

https://www.jpo.go.jp/system/design/gaiyo/info/document/2907_jirei_katsuyou/jirei_katsuyou.pdf

二つ目の事例は、JUKI 株式会社さんになります。

ここの会社さんは、日本と中国を含むアジア、米国、欧州など世界80か所に販売拠点を持つグローバル企業さんで、
海外展開を積極的にしている会社さんならではの課題や知財戦略があります。

この記事では、「1999年頃から、JUKIの工業用ミシンの模倣品が、中国などで発生するようになりました。JUKIでは、企業や製品のブランド価値が損なわれないよう、本社がある日本に加え、模倣品が製造・販売されやすい国での意匠出願を積極的に行っています。また、もし展示会で模倣品を発見した場合には、意匠権に基づく警告を当該出展者に対して行っています。」とのことです。

実際、海外展開での課題は、模倣品が生じるところです。
意匠に限らず、特許や商標は、国毎に取得する必要がありますので、知的財産権を取得損ねた国では、模倣品が多発することはあります。

そのため、知財戦略としては、模倣品の可能性のある国や市場規模が大きそうな国、拡販しそうな国について、ターゲットを定めて、知的財産権を取得していく必要はあるでしょうね。

この記事では、「 「MB-1370」シリーズについても、中国で模倣品の発生が確認されました。重要な特徴である曲面が模倣された悪質なものであったため、中国で取得した意匠権に基づき提訴した結果、2010年に勝訴し、相手方には賠償金の支払いが命じられました。この訴訟では、権利内容が主に図面などで理解でき、権利侵害の立証が比較的容易である意匠権の利点が生きたと考えています。」とのことです。

特許では、機能面が重視されるため、どうしても文書による説明が必要になります。
各国での審査官では、それぞれの文化や考え方が異なりますので、日本で特許取得出来たからといって、必ずしも他の国で特許取得出来るとは限らないという実務はあります。

逆に、意匠では、形状面が重視されるため、把握が容易で、各国の審査官による審査のズレは少ないように思います。

形状に特徴がある製品群では、意匠での海外展開を考えてみてはいかがでしょうか。

----アシスタントの質問----

正規品と同じレベルで模倣品が作れてしまうということが衝撃的でした。
情報収集をして、知識を身に付けて、模倣されない手段を身に付けるのが大事なことだと思いました。
海外での模倣品対策には、体制面での工夫も大切だと分かりましたが、
①よく起こる模倣のトラブルはどういったものが多いのか
②模倣品の摘発はどのように行っているのか
③海外での意匠権の申請に必要なコストはいくらぐらいか
について知りたいと思いました。

----私の回答----

①よく起こる模倣のトラブルは、やはり、売れ筋商品と思います。
売れ筋商品は、どうしても様々な人に露出されますので、悪意ある模倣者が出てきやすいと思います。
逆に、模倣者が出るくらい売れないと、ビジネスとして成立しない場合もあります。

②模倣品の摘発方法は、民事では、差止請求や損害賠償請求、刑事では、懲役刑や罰金刑の求刑ですね。
輸入を止める方法としての税関の水際対策、行政機関での行政処理など、いろいろ組み合わせることが出来ます。

③海外で意匠権を申請する方法として、各国毎に意匠登録申請をする方法と、国を指定して国際事務局に国際意匠登録出願をする方法があります。

各国毎に意匠登録申請をする方法では、1か国当たり10万~50万など、国の種類や翻訳の必要性などによって変動します。
国を指定して国際事務局に国際意匠登録出願をする方法では、指定国が増加する程、費用が上がりますが、国際事務局が窓口になるため、各国の代理人費用が不要になり、指定国が多い場合は、費用対効果が出る方法といえます。3か国当たり30万~70万など、国の種類によって変動します。

権利取得する国や販売する商品の価格帯、販売数量などを明らかにしていくことで、どの方法がベストかは明らかになると思いますので、その都度、検討する必要がありますね。

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