使用する砥石による包丁の切れ味の違い 〜ホームセンターで購入した関孫六包丁での実験〜

宮村和秀

宮村和秀

テーマ:包丁

今回は、使用する砥石によって包丁の切れ味がどのように変化するのかを検証するため、実験を行いました。実験に用いた包丁は、ホームセンターで市販されている「関孫六包丁」の一般的なモデルです。多くのご家庭で使われている手に入りやすい包丁で、決して高級品ではないからこそ、砥石の違いが切れ味にどう影響するかを確かめるには最適な対象と言えるでしょう。

この実験では、私が日頃より実践している宮村流「表の法則」に基づいた研ぎ方で、包丁の刃表のみをそれぞれの砥石で一回だけ研ぎ、その後に人参を試し切りして切れ味の変化を確認していきました。なお、今回の検証では刃裏は一切研いでいません。これは「使用する砥石そのものが刃をつくる」という事実を明確に示すためであり、研ぎの回数を最小限に留めることで砥石の違いによる切れ味の変化をより純粋な形で比較する意図があります。

まずは研ぐ前の包丁の状態を確認するため、人参をそのまま試し切りしました。結果はまったく切れません。前後にスライドさせても切れません。

実験していきます


これから順番に砥石を使って研ぎを行っていきます。最初に使用したのは、天草砥#300(荒砥石)です。この砥石は粒度が粗く、刃を大まかに削って形をつくるための砥石です。宮村流表の法則で刃表を一回だけ研いで、返りが出ることを確認しその後人参を試し切りすると切れるようになっていました。一回研いだだけですが明らかに本刃が付いており、包丁が人参に入り込むようになりました。

次に使ったのは、天草砥#700(中砥)です。これは荒砥よりも粒度が細かく、荒砥でできた荒い刃を整える役割を果たします。同じく刃表を一回だけ研ぎ、試し切りを行うと、#300よりもさらに軽く切れるという結果になりました。包丁が人参に滑らかに入っていく感覚があり、抵抗が減ったのがはっきりと感じられました。

続いて、青砥(中仕上げ砥)を使用して研いでみます。こちらも同様に一回だけ刃表を研ぎました。青砥で研いだ包丁は、#700の時よりもさらに抵抗が少なく、切断面も美しく整いました。スッと入る感触が心地よく、滑らかに人参をスライスできます。

最後に使ったのは、天然仕上げ砥石である「巣板」です。私はステンレス系の刃物を仕上げ研ぎする時はよく巣板を使います。こちらで一回だけ刃表を研いでから人参を試し切りすると、今までで最も軽い力で人参が切れるようになりました。これはまさに「本刃が付いている」という感覚で研ぎの仕上がりとしては最高レベルの状態になりました。

明らかになったこと


この実験を通して明らかになったのは、「使用した砥石によって包丁の切れ味が決まる」ということです。しかもたった一回の研ぎでも「返り」が出ており、本刃がしっかりと付いているのが確認できます。これはすなわち、使った砥石によって「本刃付け」がされているということであり、切れ味の最終的な決定因は、最後に使用した砥石であるということが言えます。

人造砥石で研いだ刃は人造砥石の刃、天然砥石で研げば天然砥石の刃になります。どんなに立派な包丁でも最後に当てた砥石が切れ味を左右するのです。そしてその切れ味の違いは、たった一回の研ぎでも明確に現れます。

宮村流研ぎの奥深さ


このような研ぎを正確に行うためには、当然ながら「一回で本刃を付ける」技術が求められます。宮村流の研ぎ方は一見するととてもシンプルで誰でもすぐに実践できそうに思えるのですが、実際には「宮村さんのようには研げない」「真似できない」と多くの方が口を揃えて言われます。それほどまでにシンプルな中に研ぎの本質が凝縮された方法であり、一朝一夕では習得できない奥深さがあります。

ポジティブな意見


しかしながら、「最も失敗の少ない研ぎ方」「確実に切れ味が良くなる」といったポジティブな意見も数多く寄せられています。実際にこの研ぎ方を取り入れてから切れ味が格段に良くなったという報告も多く、再現性の高い研ぎ方であることは間違いありません。

宮村流刃物研ぎを是非体感してみてください


包丁をご自分で研がれる方は、まず何よりもケガに注意して安全に作業してください。そして砥石の違いがどれほど切れ味に影響を与えるかという点にも注目しながら、ぜひご自身で研ぎの楽しさを体験していただきたいと思います。砥石の選び方ひとつで包丁の切れ味は確かに変化します。その変化を実感できるのも、刃物研ぎの醍醐味のひとつです。

もし「自分ではうまく研げない」「時間がなくて研ぐ暇がない」「大事な包丁だからプロに任せたい」といった方は、ぜひ私に研ぎ直しをご依頼ください。宮村流の技法を用い、一本一本丁寧に完全手研ぎいたします。そして確かな切れ味を、あなたの元にお届けさせて頂きます。

包丁が切れると料理が楽しくなります。が、切れない包丁はストレスになります。
この機会に宮村流刃物研ぎを是非体感してみてください。
ご連絡をお待ちしております。

Facebookで研ぎ動画公開しております。

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宮村和秀
専門家

宮村和秀(刃物研ぎ師)

包丁の宮村

40年の研さんで築き上げ、今なお進歩を続ける独自の刃物研ぎメソッド「宮村流」は機械を使わない完全手研ぎで、刃物の切れ味復活させます。

宮村和秀プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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