剪定鋏の研ぎ直し—宮村流の技法で甦る切れ味!

宮村和秀

宮村和秀

テーマ:ハサミ

ご年配の男性が剪定鋏を研ぎ直しに持ってこられました


見ると長年使い込まれた剪定鋏で、刃の切れ味が落ち、汚れや錆も見られます。「長いこと使ってきた鋏やけど、また切れるようになるかな?」とお客様。私は「大丈夫です。宮村流でしっかり研ぎ直します」とお応えし、お預かりしました。

宮村刃物研ぎは、機械を一切使わない完全手研ぎです。まず初めに、耐水ペーパーを使って剪定鋏の刃と受けに付いた汚れや錆を落とします。さらに落としにくい場合は砥石も使い、表面をできる限り綺麗にします。この工程は、ただ見た目を綺麗にするだけではなく、刃の状態を正確に把握し、研ぎの準備を整える大切な作業となります。

次に、研ぎに入ります。私は剪定鋏を研ぐ際にナットを外して分解しません。理由は、分解して再組立てするとナットがトモマワリして使いにくくなることがあるからです。また、分解してバフをかけて磨く方法もありますが、熱が加わるとで刃に影響が出るため、私はその方法を取りません。

天然砥石を使った刃物研ぎ


宮村流では、荒砥石から仕上げ砥石まで、すべて天然砥石を使います。天然砥石は研ぎの際に滑りにくく、しっかりと刃付けができる理想的な砥石です。また、仕上がった刃の切れ味も格別です。

研ぎ方は「宮村流表の法則」に従います。「宮村流表の法則」は、刃物を研ぐ際に表で研ぎ終える方法です。剪定鋏だけでなく、他の刃物もこの法則に従って研ぎ直します。

荒砥石で刃の形を整え、中砥石で刃先の細かな調整を行い、仕上げ砥石で最終的な本刃付けを施します。こうした工程を丁寧に確実に行うことで、刃を痛めることなく、強い刃を付け、鋭い切れ味を持続させることができます。

試し切りと仕上げ


研ぎ終えた剪定鋏の切れ味を確認するため、試し切りを行います。竹の割り箸を一本切ってみると、スパッと切れました。さらに、二本同時に切っても、同じようにスパッとに切れます。「これで良し」と納得し、剪定鋏を乾かした後、刃物油を付けて仕上げます。

お客様へお渡し


お客様が受け取りに来られました。実際に我が家の庭の花木の枝を試しに切っていただくと、「オー、よう切れるわ!」と驚かれました。「ありがとうございます」と感謝を述べ、お渡しすると、お客様は代金と共に「親父が使っていた剪定鋏、使うか?100年は経ってるで」とおっしゃり、古い剪定鋏をくださいました。

「良いんですか?」とお聞きすると、「研いでもらったのがあるから」と笑顔でおっしゃいました。貴重な剪定鋏を譲り受け、私も感謝の気持ちでいっぱいになりました。

宮村流の技法と天然砥石の魅力を伝えながら切れなくなった刃物を復活させることで、皆様のお役に立てることに心より感謝いたしております。





こちらが100年物の剪定鋏

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Mybestpro Members

宮村和秀
専門家

宮村和秀(刃物研ぎ師)

包丁の宮村

40年の研さんで築き上げ、今なお進歩を続ける独自の刃物研ぎメソッド「宮村流」は機械を使わない完全手研ぎで、刃物の切れ味復活させます。

宮村和秀プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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