発達障害児の家族支援をしています
不登校の子どもが増える今、「なぜ行けないの?」と悩む親たち
不登校になる子どもが増えています。昨日まで元気に学校へ行っていた子どもが、ある日突然学校に行けなくなる――そんな状況に親は戸惑います。
「なぜ子どもは学校に行けないのか?」という疑問に始まり、不登校が続くと、「勉強が遅れるのが心配」「ゲームばかりしているのをやめさせたい」「仕事との両立はどうしよう」「いっそ仕事を辞めて子どもに付き添うべきか」と、悩みがどんどん膨らんでいきます。
子どもが学校を拒む「本当の理由」とは?
子どもたちは不登校の理由として、「教室が騒がしい」「先生が苦手」「誰かが怒られているのを見るのが嫌」「特に理由はない、何となく」「やる気が出ない」などといったことを話します。しかし、たとえそれらの問題を解決したとしても学校に通えるようにはなりません。なぜなのでしょうか?
実は、子どもが学校に行けなくなる大きな理由のひとつが「授業がわからないこと」にあるからです。いじめを除く不登校のほとんどの原因は勉強からくる苦痛だと言っても過言ではないかもしれません。しかし、子どもは「勉強ができない」とは言いません。自尊心を保つため、自分を守るために本音を隠してしまうからです。そして、不登校がすぐに解決しないのは、学校に行こうと思い立つ気持ちと、勉強についていく力が一致しないからです。学校に行こうと決意して登校しても、授業の内容が理解できなかったり、過去のつまずきが解消されていなかったりすると、再び「できない」という感覚に直面します。その結果、自信を失い、学校に行くこと自体がまた苦痛となり、不登校に戻ってしまうのです。
小さな「つまずき」が学校嫌いにつながる
特に小学4年生以降に学校の授業がわからなくなったと感じる場合、実はつまずきは小学2年生頃から起きています。しかし、この時期の学習内容はまだ比較的簡単なため、親も子どもも「できなくはない」と思いがちです。ドリルなら親がそばにいればこなせますし、音読も一緒に読めばなんとかなります。そのため「勉強はできている」と思い込んでしまうのです。
しかし実際には、授業中、先生の話が理解できない時間が少しずつ増えています。その「わからないこと」に耐える毎日が、子どもの自信や自尊心を静かに傷つけています。この小さなつまずきが積み重なり、小学3~4年生になる頃には、「授業についていけない」という深刻な状況になり、学校への抵抗感として現れます。そして無理に通わせても、中学に進む頃には完全に不登校になるケースが少なくありません。
低学年以下の不登校は、不安、言葉の遅れ、発達障害を考える
低学年以下で不登校になった場合は、社交不安障害、言語の遅れ、発達障害などの可能性を考えてみましょう。最近は繊細という言葉でひとくくりにされてしまうことがありますが、気質で片づけてしまうと真因が見えなくなる恐れがあります。不安、言葉、発達の問題は自然と快方には向かいません。心当たりがある場合は、児童精神科医、小児神経科医、臨床心理士、言語聴覚士などの専門家に相談しましょう。いずれにしろ長期戦の覚悟が必要です。(医療や言語療法を受けた後の長期サポートは当教室でも行っています)
勉強が苦手なことで起こる友だちトラブル
勉強と友人関係は一見何のかかわりもないように思いますが、勉強ができないことで下がった自己肯定感が友だちトラブルを引き起こすことがあります。自分に自信が持てないため、友だちの何気ない行為に傷ついたり、バカにされたと感じたり、また、自分は常に人から見られていると過敏になったり、さらには、人の気持ちを考えすぎて自分は嫌われているんじゃないかと疑ったりするなど、友だちと対等な関係を結ぶことが難しくなっていきます。不登校の理由の「友だちとうまくいかない」という言葉の裏にはこのような事情が隠れていることがあります。
「勉強が苦手」という現実を認める勇気
多くの親は、子どもは「学校に行かないから勉強ができなくなった」と考えがちです。でも、実際は逆で、「勉強ができないから学校に行けなくなった」のです。
一方で、勉強がわかれば子どもは困難を乗り越えながら学校に通える力を持っています。「うちの子は勉強が苦手かもしれない」と認めることは親にとって勇気がいることです。でも、その現実に向き合い、適切なサポートをすれば、状況を変えることは十分に可能です。
子どもの小さなSOSに気づこう
「勉強がわからない」という悩みは、子どもにとってとても言いづらいものです。だからこそ大人がその小さなサインに気づいてあげることが何より大切です。勉強の「つまずき」を早く見つけてサポートすることで状況の悪化を防ぐことができます。
親子の時間を増やしてみて
長い休みは子どもの心と向き合うチャンスです。楽しい時間を一緒に過ごしながら、少しずつ子どもの気持ちを聞いてみてください。そして、親としての「そんなことで?」や「逃げてばかりではどうする!」という気持ちはぐっと抑えてみましょう。子どもの立場に立ち、子どもから見える「学校の景色」を一緒に考える時間が、子どもに何よりの安心感を与えるはずです。