ひとりで相続対策

「うちは財産なんてほとんどないし、相続対策なんて必要ないよ」とお思いの貴方。
相続対策は、財産の多い少ないは関係ありません。財産が少ないからといって円満円滑な相続がなされるという根拠はありません。むしろ限られた財産、貴重な財産であるからこそ、家族に円満に受け継いでもらうように、今から準備しましょう。専門家に頼らず、自分ひとりでできる「ひとりで相続対策」をご紹介します。

まず仮にあなたの現時点での財産を以下のとおりと仮定します。

預貯金　900万円

そしてあなたの家族（法定相続人）は子3人と仮定します。

もっともシンプルな相続対策は以下のとおりです。

第1段階　預金口座の開設
普通預金口座を3つ開設します。そして3つの口座に任意の金額を入金します。
例えば、A口座に300万円、B口座に300万円、C口座に300万円といった感じです。

第2段階　遺言書の作成
次に遺言書を書きます。遺言書は公正証書遺言をおすすめします。自筆証書遺言では後に不備などがあり無効となる恐れがあるため、万全を期すため公正証書遺言をおすすめします。
遺言書の内容は、以下のとおりです。

1．普通預金A口座は、長男に
2．普通預金B口座は、次男に
3．普通預金C口座は、三男に
4．その他の財産は長男、次男、三男が均等に取得する事
といった具合です。
こうすることであなたの死後、この遺言書が実行されると、3人の子供たちはそれぞれ300万円ずつ相続することになります。

ここからは、あなたの想いです。
3人の子供に均等に配分するのではなく、普段から身の回りの世話をしてくれている次男には多めに、疎遠な長男や三男には少なめに、といったように差をつけて分配したいと考える場合があると思います。
その場合、A口座とC口座から100万円ずつをB口座へ移動させるのです。こうすることで遺言書を書き換えることなく、3人の子供が引き継ぐ財産額が変動します。
ここで注意してほしいことは、この結果を受けて3人の子供がどのように思うかです。差をつけた理由を残しておくべきです。差をつけた理由は遺言書に書きこむことができます。これを付言事項といいます。
このケースでの遺言書のサンプル文例を以下に記します。

遺言書

遺言者○○は次のとおり遺言する
1．長男△△には次の財産を遺贈する。
南北銀行　普通預金　A口座

2．次男××には次の財産を遺贈する
南北銀行　普通預金　B口座
その他の遺言者名義のすべての財産

3．三男□□には次の財産を遺贈する
南北銀行　普通預金　C口座

4．この遺言の遺言執行者に次男××を指定する

5．付言事項
私は3人のよい子供たちに恵まれて、幸せな人生を送ることができたと心から感謝しています。
特に身の回りの世話をしてくれた次男××には本当に感謝している。3人の兄弟で引き継ぐ財産に差があるには、そのためだと思ってほしい。長男△△と三男□□は遠方に暮らしており、滅多に会うことが叶わなかったのは仕方のないことかもしれないが、その分次男の××には随分と負担をかけてしまった。△△と□□もそのことは十分に理解してほしい。
これからも兄弟仲良く、暮らしてくれることを心から願っています。よい人生を本当にありがとう。

こうすることで長男△△は200万円、次男××は500万円、三男□□は200万円を引き継ぐことになります。
最後の付言事項は法的な力はありませんが、なぜこのような遺言を残したのかを残された家族に記す、あなたの最後のメッセージとなります。重く受け止める方がほとんどであるため、心理的効果はあります。あなたも円満な「ひとりで相続対策」を考えてみませんか。