愛車奪還を支える盗難追跡システム開発のプロ
豊田博樹
Mybestpro Interview
愛車奪還を支える盗難追跡システム開発のプロ
豊田博樹
#chapter1
近年、リレーアタックから始まった自動車の盗難手口は更に巧妙化。ドアの解錠やエンジンの始動といった通信システムに不正アクセスする「CANインベーダー」や、車本体から発する微弱電波を解析し、スマートキーに成り代わる「キーコピーツール(通称GAME BOY)」の登場により、以前はオーナー側にて一定の予防効果が期待できた盗難防止対策も、狙われたら防ぎようがないところまで来ているのが実情です。
窃盗犯から愛車を奪還すべく、豊田博樹さん率いる「テクラ」では、自動車・自動二輪車向けの盗難検知・追跡サービス「REGUIT(リグート)」を提供しています。
「盗難は時間との勝負。気づくのが遅れるほど発見は難しくなるとともに、部品として密輸出するために解体される可能性が高まります。リグートは迅速に異変をお知らせし、リアルタイムに近い状況で車の行方を追います」
車両の異常な動きを検知すると、スマートフォンの画面にアラートを表示し、反応がない場合は自動音声による電話でオーナーへ連絡。5秒間隔で位置情報を送信し、衛星で捉えるGPSに加え、周囲のWi-Fiスポットや携帯基地局を利用した多層測位にも対応。地下や高架下などでも現在地を把握できるよう設計しています。
また、車から離れると自動的に監視モードへ移行し、近づくと解除されるビーコン装置とも連動。操作の手間を省き、日常的に無理なく使用できる配慮も施しています。
SNSで車の写真や逃走マップを拡散する機能や、長時間の駐車時は給電を停止し、電波探知機に反応しない「ステルスモード」なども搭載。情報共有や、バッテリーの消費量を抑えて長期運用できる仕組みを整えています。
「製品名は『REGAIN(取り戻す)』と『PURSUIT(追跡)』に由来します。名前の通り、盗まれても諦めずに取り戻す『最後の砦(とりで)』をお届けしたいと考えています」
#chapter2
豊田さんは約35年にわたり、法人向けのシステム開発に従事。業務の効率化や省力化に携わる中で、「この仕事は人のためになっているか?」という疑問も感じていました。
50代を迎えて定年退職を意識する中、「エンジニアとしてやり残したことはないか」と自問自答。多くの人に喜ばれるものを作りたいという思いを強くするとともに、高校時代の経験がよみがえります。
「高校時代、大切にしていたバイクを盗まれた経験があります。突然姿を消した現実を受け入れられず、大きなショックを受けました」
その後も自動車やバイクの盗難被害の話を耳にするたび、「盗まれたら終わり」という現実を変えられないかと考えるようになりました。
「ものづくりを通じて課題解決を導くエンジニアとしての気概と、車好きとして抱えてきた窃盗に対する悔しさが、原動力となりました。エンジニア仲間の協力を得て、2020年、会社勤めの傍ら『リグート』の開発に着手し、2021年に『テクラ』を設立しました」
1年ほどでシステムの大枠を固め、車へ実装して何度も検証。通知頻度や電波状況、バッテリー消費などを確認し、安定した動作環境を構築。ユーザー目線で使いやすさも追求しました。
#chapter3
「リグート」は、セキュリティー専門店やカー用品店、ネット販売などを通じて展開。特に関東圏や中部圏における関心が高く、建設機械や、営業・送迎に用いる社用車を保有する法人からも引き合いがあります。
現在も改良を継続。複数の連絡先へ通知する機能や、複数車両の一元管理、また、一昨年から実証実験的に取り組んできたシステム開発分野へのAI活用を2025年秋から本格導入し、REGUITを始めとしたさまざまな自社プロダクト開発に取り組む豊田さん。しかしながら、開発において一貫しているのは、安全性を優先することです。
「『盗難車を止める機能を付けたら?』と言われたことは何度もあります。これは当社の技術で実現可能ですが、あえて組み込みません。何故なら世の中に絶対壊れない、不具合が無い装置は無いからです。万が一の誤動作、例えば走行中に電気系統が全て停止した場合にはハンドルもブレーキも効かなくなるのが現代の車です。テクノロジーが進化して出来ることが増えた現代だからこそ、利便性とリスクを見極めてプロダクトを提供する義務があると考えています」
社名の「Techrra」は、技術を表す「Technology」と、地球を意味するラテン語「Terra」から成る造語。「技術で人々の幸せに貢献したい」という願いを込めています。
「愛車を守るリグートも今後の開発も、根本にある考え方は同じ。目指すのは、不利益を被る人を減らす仕組みです。日々の生活に役立ち、『使ってよかった』と満足してもらえる製品づくりに取り組んでいきたいですね」
(取材年月:2026年4月)
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Profile
愛車奪還を支える盗難追跡システム開発のプロ
豊田博樹プロ
システム・ソフトウェア・アプリ開発
テクラ株式会社
5秒間隔の追跡や、GPS・Wi-Fi・携帯基地局測位を組み合わせた測位機能、自動通知やステルス機能も搭載。「盗まれたら終わり」にしないため、安全性と使いやすさを追求したシステムを開発しています。
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